脱原発と電力確保のトレードオフをどうするか

2011年06月13日 13:25

関電が7月から15%節電を求める方針を固めたことで、脱原発と電力確保が、あちらを立てばこちらが立たずのトレードオフの関係にあるという現実が浮上してきたことになります。関西への製造拠点やデータセンターなどの西日本シフトへの期待にも、突然冷水がかけられました。

国民のなかに脱原発への機運がたかまってきたことは自然な国民感情の流れだとしても、では、実際にどのように脱原発を進めるのか、政治が国民にコンセンサスを得るエネルギー政策を示せるのかどうかに、日本の経済、また国民生活にとって、極めて優先度の高い課題になってきたと感じます。

菅総理は、自然エネルギー重視への転換を打ち出していますが、脱原発にいたる過渡期のシナリオについては一切触れていません。脱原発という目標を掲げることは誰にでもできることですが、もっとも重要なのはそれを達成するプロセスです。はたして次の政治リーダーがそのシナリオを描けるのかどうかは、なににも増して重要なテーマになってきています。


関西電力が節電を求めてきたのは、11基ある原発のうち3基が定期検査を終えたにもかかわらず、地元が安全対策が十分でないとして再稼働に難色を示し、再稼働の目処がたたないからです。

関西広域連合が、電力逼迫を見越し、節電目標を独自に5~10%と設定したばかりでしたが、関電サイドは、それ以上の電力の逼迫を予想し、それを上回る節電要請を求める方針です。
突然の発表に説明を求める橋下知事との会見を八木社長が断ったことは、脱原発を強く打ち出した橋下知事への反発があり、牽制球だという印象を深めています。

この綱引きがどう収拾するのかは別にして、脱原発と電力確保が、両立しないことをあらためて浮き彫りにしています。。

国民のなかにも脱原発への機運が広がりつつありますが、まだまだ嫌原発感情、原発への不安によるところが大きいと思われます。電力確保と脱原発を関連付けて考えられているとは必ずしも言えない状態ではないでしょうか。しかもどれほど国民が生活の不便さを我慢して節電が可能かの見通しも立っていないし、実感としても受け止められていないのでしょう。

そのことは、あれだけ節電が求められた東電管轄のエリアの電力販売実績を見る限り、計画停電で混乱した3月でも、家庭用や小規模商店向けの「電灯」需要は、対前年同月で、関電エリアの6%増よりは低かったものの、3.5%伸びていたのが現実です。4月にはいって、東電エリア全体としては3月の5.9%減から、13.8%減へと節電が進みましたが、もっとも寄与したのが「大規模需要」であり。「電灯」需要は10.6%減にとどまりました。関電から示された15%節電がかなり厳しい節電目標であることは、この東電の販売実績からも伺えます。
過去のブログで、東電と関電の販売電力量の対前年比較データをグラフ化して取り上げていますので、ぜひそちらも御覧ください。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 節電の東西温度差 – :

さて、トレードオフの関係は、商品開発やマーケティングにはつねにつきまとう問題です。その最適な関係を求めてきた歴史ともいえますが、両立を可能にするのは最終的にはなんらかのイノベーションが生まれることによってしかありえません。したがって現場で求められるのは、現実を踏まえ、実行可能な解を描き、最大の価値の実現や成果を生み出す知恵です。

いま政治に求められているのは、日本のエネルギー政策がどうするですが、もし脱原発を進めるという国民意識の流れにそった政策を推進するとすれば、3つの課題があります。

第一は、脱原発の代替エネルギーをいつ、どれくらいの比率にもっていくのかという目標の設定と、イノベーションを促す環境づくりです。
第二は、脱原発と電力不足の折り合いをどうつけるかの方針を示すことと、その国民合意を取ることです。自然エネルギーによる電力確保がすぐさまできるわけでなく、過渡期をどうするのかはもっとも政治に試されているところです。
第三は、実際に脱原発を進めるとして、廃炉には膨大な費用がかかってきますが、それをどう処理するかです。

イノベーションを促すには、発送電の分離が欠かせませんが、ほんとうにできるのかどうかです。技術的にも、制度的にも決して難しい問題ではないとしても、電力会社の抵抗はかならず起こり、実際にその方向に政治を動かすためには強い政治の意志とリーダーシップが必要です。

この夏に、どれくらいの節電ができるのか、また電力不足の影響があるのかを実感してはじめて政策課題としての重要度への理解が進むのかもしれませんが、エネルギー問題をクリアできなければ、日本はさらに対立が深まり、経済の停滞が目に見えて起こってくることは間違いありません。

エネルギー問題は、政策を競いあい、総選挙で国民の信を問うぐらいの大きな問題だと思います。脱原発を強力に推し進め、産業にも国民にも我慢を求めるのか、緩やかに脱原発を推し進め、緩やかな節電を求めるのか、あるいは原発の維持また増設を行うのか、与野党問わず、政治家はどの政策の選択を行うかから逃げることは許されません。国民とは関係の無い権力争いや、国会運営で奔走している暇も余裕もないはずです。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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