「原発か自然エネルギーか」というナンセンス

2011年06月14日 08:52

イタリアの国民投票で反原発派が圧勝した。この際、日本も反原発に同調して日独伊三国同盟を結んではどうだろうか・・・というのは冗談だが、この三国には民度が低くて電気代が高いという共通点がある。イタリアは原発ゼロで、電気代は欧州で最高だ。ドイツの電気代はフランス(原発80%)の2倍で、両国ともフランスから電力を輸入している。


以前の記事でも書いたように、「脱原発か否か」というのは間違った問題である。間違った問題をいくら考えても正しい答は出ない。本来の問題は、エネルギーのポートフォリオをどう構成するかということであり、それを「原発か自然エネルギーか」という二者択一に単純化して街頭デモをやったり国民投票をやったりしても意味はない。

これは原発推進派にも問題がある。かつて原子力は、鉄腕アトムに象徴される「夢のエネルギー」であり、英語でもtoo cheap to meter(安価で電力計がいらなくなる)といわれたことがあった。しかし核燃料サイクルが破綻してプルトニウムの再利用も困難になった今、バックエンドのコストを内部化すると原子力は「普通のエネルギー」であり、いい意味でも悪い意味でも特別な問題ではない。

他方、反対派の「脱原発=自然エネルギー」という主張もナンセンスである。日本の電力の6割以上は化石燃料であり、太陽光や風力は1%に満たない「おまけ」だ。原発への依存度を下げるなら、化石燃料に代替するのが当然である。経済性を基準にすると、ガスタービンによるコンバインドサイクルが最有力である。シェールガスの埋蔵量は200年近くあり、主要産地はアメリカなので地政学的リスクもない。

エネルギーの主役は、原発からガスタービンに移ったのだ。唯一の問題は地球温暖化だが、天然ガスのCO2排出量は石炭の半分で、大気汚染も採掘事故も少ない。日本が「温室効果ガス25%削減」を本気で実現するなら化石燃料をこれ以上増やすことはできないが、もはや政府でもこの国際公約を真剣に考えている人はほとんどいない。

つまり現在の問題は原発でも再生可能エネルギーでもなく、化石燃料を再評価して地球温暖化対策を見直すことなのだ。温暖化がどれほど大きな問題かについては論争があるが、ビル・ゲイツもスチュアート・ブランドもいうように、地球温暖化を防ぐ上でもっとも有効なのは原子力だから、温暖化の影響が顕在化した場合にそなえて原子力の研究開発は続けたほうがいいだろう。

きょう発売のビデオブックでインタビューした澤昭裕氏は、私の経済産業研究所の元同僚である。当時は二人で京都議定書に反対したが、以上の点でも意見は一致した。地球温暖化対策への過剰なコミットメントをやめれば、エネルギー価格を上げないで原発への依存度を徐々に下げることは可能である。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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