電子書籍の標準化は進むのか

山田 肇

紀伊國屋書店、ソニー、パナソニック、楽天の四社は、電子書籍の利便性向上に共同で取り組むことに合意したと、昨6月13日に報道発表した。合意内容は、各種電子書籍端末と電子書籍ストアの相互接続実現、購入したコンテンツの利用者による一元的管理、書店ポータルサイトの開設と多岐にわたっている。

常々、電子書籍は、利用者視点から、次の三条件を満たすべきと、僕は主張してきた

1 どのネット書店でも、あらゆる電子書籍を購入できる
2 購入した電子書籍は、どんな端末でも読むことができる
3 年月が過ぎても、上の1と2が継続する

リアルな書籍には、紀伊國屋だけとか丸善だけといった購入制限はない。それと同じようにすべきというのが条件1である。利用者が自宅でも外出先でも電子書籍を閲覧できるようにというのが、条件2である。情報通信機器の発展は速いが、数年前に購入した電子書籍が閲覧不能になるという事態は避けたい、というのが条件3である。

今回の発表で、三つの条件が満たされる可能性が出てきたことを歓迎したい。


各社が独自性を競い合うセグメント化された市場から、相互接続可能な、標準化された環境に移行すれば、電子書籍市場は拡大していく可能性が高い。DVDやブルーレイの場合、多様な映像コンテンツが多くの企業から供給される一方、利用者は自由に再生機器を選択できる。だからこそ、市場は拡大した。それと同じことだ。

今回の四社発表を契機に、電子書籍における標準化について議論が進み、相互接続性が実現するように期待する。

情報通信政策フォーラム(ICPF)では、5月のセミナーに妹尾堅一郎氏をお招きした。妹尾氏は、知的財産戦略本部「知的財産による競争力強化・国際標準化専門調査会」会長であり、コンピュータ利用教育学会(CIEC)会長でもある。それらの立場で、電子書籍のビジネスモデルや、電子書籍による教育イノベーションの可能性について講演していただく。少々余席があるので、興味をお持ちの方は是非ご参加いただきたい。

山田肇 - 東洋大学経済学部