テレビを変えてくれるのは一体誰でしょう

2011年11月07日 12:50

東京スカイツリーの完成が近づいてきました。次第にできあがっていく様子に人々の期待がさらに高まってきています。東京を一望でき、またイルミネーションで美しく輝くスカイツリーは、観光スポットとしての高い価値をきっと持つことと思います。

しかし皮肉なことに、スカイツリーに人々は未来に向けた希望、また輝きを見ているのですが、テレビにかかわる産業は衰退の道をまっしぐらに突き進んできているというのが現実です。

さて、東京スカイツリーが滅び行くテレビの世界の史跡となるのか、テレビの新しい世界の幕開けの象徴となるのか、その瀬戸際にテレビ産業は立っています。さて、いったい誰がテレビの世界を塗り替え、復活させるのか、あるいはそもそも復活や再生が可能なのかに関心はいやがおうでも高まってきます。


テレビ産業の危機的状況は、見る装置としての国内の液晶テレビ事業に訪れてきています。SONYは8期連続赤字、パナソニックも3年連続赤字でついにプラズマ工場を止めるようです。東芝もついにこの事業で赤字を計上しました。シャープも計画の下方修正を行いました。

液晶テレビは、液晶パネル事業や液晶テレビ事業が国内各社にとどまらず、コモディティ化の急激な流れで価格下落に歯止めが効かず、典型的な勝者なきレッドオーシャンに陥ってしまいました。途上国での需要はまだ伸びるとはいっても、中国の大型液晶パネル工場が来年には稼働がはじまり、供給過剰の状況の改善は見込めません。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 液晶テレビは逃げ足の速さが勝負になってきた –

それにしても激しく速い変化でした。アメリカで2007年に薄型テレビの世界に衝撃が走ります。台湾資本のアメリカ企業であるVIZIOが登場し、あっというまに北米のトップに踊りでたのです。それまでの日本対韓国の競争地図を塗り替えます。VIZIOは液晶テレビのコモディティ化がもはや避けられない現実だということを見事に証明したのです。

大西 宏のマーケティング・エッセンス : 液晶テレビVIZIOはアジア型産業にとっての脅威になるか –
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 日本の薄型テレビは生き残れるのだろうか –

その後に、液晶テレビは不幸なことに、イノベーションを遅らせる風が吹き、またカンフル剤を打って延命しようとします。

ひとつは地デジ化による買い替えであり、それをエコポイントが加速させました。需要の先食いです。地デジ化が終わればその先に地獄がまっていることは誰にが想像のつくことでした。さらに韓国メーカーも含め、テレビそのものの価値が下がってしまったにも関わらず、イノベーションを「技術革新」と錯覚し、3Dに走ってしまったのです。

テレビを通して世の中にもたらす変化、ユーザーの楽しみを広げることではなく、見え方を変えるだけの技術革新に救世主を求めてしまったです。しかも、メガネをかけなければならない、番組もそろっていないことは、3Dとしては未完成そのものでした。超えなければならないハードルは高く、失敗することは予想されたことでした。
大西 宏のマーケティング・エッセンス : 3Dテレビがクリアしなければならないハードル –

液晶テレビではなく、コンテンツ側はどうでしょうか。国内の放送局がさえません。視聴率が稼げず、若い世代から見放されはじめています。通信白書では、10代は、2005年に1日平均106分だった視聴時間が、2010年には70分と、わずか5年で3割以上も減少しています。
広告費が減ったために番組制作費を削ることで、利益を確保しようという動きが、どのチャンネルを回しても同じような番組、いかにも制作費を削った番組を増加させ、それでさらにテレビ離れを進め、結果、視聴率があがらないという負のスパイラルに陥り始めたように見えます。

コンテンツを提供する放送局側も、見る装置を提供する薄型テレビ事業も下り坂を辿り始めていますが、逆に見れば放送という生態系そのものが成熟し衰退し始めたということです。

しかし視点を変えれば、テレビの世界に、利用者にとってテレビがもっと役立ち、もっと便利となり、もっと楽しみを広げるイノベーションが求められてきているということであり、その好機が来ているともいえます。ハード側のテレビ事業をめぐる業界再編の機も熟し始めています。

また、数年前のライブドア元社長の堀江さんがテレビとネットの融合を主張したときには、ありえないと多くの人が否定しましたが、もはや中村伊知哉さんが書かれているように放送とネットの融合はあたりまえとなりました。しかしビジネスとしての成功はまだ小さいというのが現実です。

ついでですが、そのときに、テレビは離れて画面を見るもの、パソコンは画面に近づいて見るもので世界が違うといった不思議なことを主張する人たちがいました。今でも同じように電子書籍は紙の書籍の代替はできないと主張する人もいらっしゃいます。どんな時代にもそういった人たちは必ず現れます。
Business Media 誠:中村伊知哉のもういっぺんイってみな!:融合は終わり。次に来るメディアは? (1/4) :

さらにおそらくテレビの世界に関わる人たちの多くは、やがて、テレビと、スマートフォンとパソコンが、クラウドでつながっていくという技術の流れを見ているはずです。だからSONYもグーグルテレビにチャレンジしています。しかし残念ながら今のところは成功していません。
アップルテレビも、まだブレークしていません。なにか音声認識技術で、リモコンを変えようとしているといった憶測もでていますが、それだけで成功するとは思えません。

テレビの世界で、いま必要なイノベーションの主役は、技術ではないように感じます。なぜなら、番組のコンテンツを供給する放送局、ゲームなどのコンテンツを供給する企業、またテレビ向けのアプリなどを集積するビジネスのしくみがテレビの世界の価値を広げるはずだからです。

しかも、いかに若い世代がテレビ離れを始めたといっても、もっとも多くの時間が費やされているメディアはやはりテレビなのです。だから、グーグルも、アップルもテレビに執着しているのです。

ではそんなビジネスを実現するのは一体誰なのでしょうか。グーグルでしょうか。アップルでしょうか。はたまたSONYやシャープでしょうか。アメリカのビデオ・オン・デマンドサービスを低価格で提供するNetflixのような企業でしょうか。NTTやNTTドコモのような通信インフラ企業でしょうか。

おそらくこのイノベーションは、単独では実現することが難しく、放送局などのコンテンツ側にも、通信会社にも利益をもたらすビジネスのしくみをつくることができ、多くの関係する業界に魅力あるビジネスのしくみを提案できる企業、あるいは企業群ではないかと感じ始めています。

業界にいる人たちに考えて欲しいのは、テレビが変われば、学校の授業ももっと変わります。これまでインターネットに疎遠だった人たちも、地域情報はじめ、ささまざまな情報を得ることが出来る環境が生まれます。生活の過ごし方が多様になってきており、好きな時間に見たい番組を自由に見ることができれば番組を見る人も増えます。

あとは志(ココロザシ)の問題でしょう。テレビで人々の暮らしを変える、その可能性へのチャレンジを旗印にして、業界に働きかける熱意です。そういったイノベーションを起こすことは日本の将来にも明るい兆しとなってきます。

テレビの世界を変えるリーダーがいずれの業界から生まれるのかは予測できませんが、それを変えた企業がおそらく次世代のメディア時代の主役として踊りでてくるのだと思います。

手始めに、民放のいずれかの局と、通信会社との関係の深い家電が組んで、日本型の新しい、便利で、楽しく、役に立つテレビサービスでもやってみてはどうでしょうか。それとも黒船がくるまで、じっと待ちますか。

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大西 宏
株式会社ビジネスラボ代表

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