保護主義の政治家を落選させよう

池田 信夫

民主党の経済連携プロジェクトチームは9日にも意見を集約しますが、反対派が多数を占めているようです。共同通信の世論調査によると、TPPへの賛成は38%、反対は36%で、賛否が拮抗しています。保護主義が政治的に人気があるのは珍しくないが、今回は交渉の中身がわからないうちから「アメリカと交渉したら負ける」という被害妄想が増殖しているのが特異です。


反対派の話は「慎重に進めろ」と言うばかりで中身がないので、何を恐れているのかわからない。選挙が恐いという以外の論理的な理由がないからです。その中で具体的な話をしている数少ない政治家が、川内博史氏(経済連携PT座長代理)です。彼はツイッターで次のような話を繰り返しています。

TPPは、貿易ではなく、非関税障壁の撤廃にこそ、その目的がある。国民生活を守る為に定められている法律.規制.技術基準.規格.表示など、あらゆる分野において米国の利害関係者即ち米国企業が影響力を、正式な会議の場で行使できるようになる。資本の論理そのものになる。公正さが全く無くなる。

彼は「非関税障壁」って何か、知ってるんでしょうか。これはWikipediaにも書かれているように「関税以外の方法によって貿易を制限すること」であり、「貿易ではなく、非関税障壁の撤廃にこそ、その目的がある」というのは日本語として意味をなさない。TPPはよくも悪くも貿易交渉であり、それ以上のものではない。「日本を破壊する」ようなインパクトなんかないのです。

条約は当事国がすべて一致しないと調印されず、さらに国会で批准するのだから、アメリカが一方的に決めるとか「多数決」で決まるなどということはありえない。京都議定書を土壇場で離脱したアメリカのように、交渉がまとまってからでも拒否できるのに、始まる前から大騒ぎしているのは、通商交渉を知らない人々です。

もっと細かい話としてはISDS(投資家と政府の紛争解決機関)というのがありますが、そんなものはTPP交渉には含まれていないし、米豪FTAでオーストラリアはISDSを拒否したので、TPPに入る可能性もない。川内氏は再販制についてこう書いています。

今朝TPPに関する勉強会で、新聞雑誌書籍、音楽CDの再販売価格維持制度について、TPPの中で議論の対象になる、それは間違いない、と公正取引委員会から明確に説明があった。

彼はホームエンタテインメント議員連盟の会長として再販制には反対しているのだから、これはいいことでしょう。役所がいやがって進まない改革を、外圧で進めることに意味があるのです。

川内氏のタイムラインをみると、農水族でもない彼がこの問題について発言し始めたのは、ここ1ヶ月です。おそらく座長代理になってから農水省の「ご説明」や農協の激しいロビイング(無形の賄賂)を受けたのでしょう。選挙に弱い彼が農協を恐れる気持ちもわかるので、こういう政治家には都市の有権者が鉄槌を下し、保護主義に加担して無知をさらすと選挙に負けると思い知らせるしかない。右上のTPP反対署名の紹介議員は、こういう愚かな政治家のリストとして便利です(クリックで拡大)。次の選挙の参考にしてください。