新入社員に贈る7箇条

2012年01月01日 15:31

昨年末、アゴラでも就活や大学に関する、有益で活発な議論が展開された。議論は、真実に近づく為の唯一の手段であり、否定する積りは毛頭ない。しかしながら、議論を幾ら重ねても、受け入れ先の企業が何も変わらないというのも、今一つの事実である。

そんな訳で、お屠蘇気分充満の本日、4月から新社会人となる学生の為、少し早いが、このタイトルで記事を書く事にした。尚、舞台は歴史のある、それなりに有名な製造業という設定である。


第一条。入社式での社長スピーチは無視する事

この会社では、社長スピーチの原稿は経営企画部が作成する事になっており、業務分掌で明確に取り決めてある。それが決まったのは、何分古い話で今や誰も理由や経緯を知る者はいない。

従って、作成要請は、社長室長→秘書課長→秘書課課長代理→秘書課担当→経営企画部長→経営企画課長→経営企画課長代理→経営企画課担当のルートでなされる。原稿ドラフトの提出はこの全く逆のルートで行われ、最終、社長室長から入社式の前日社長に提出される。

今年は、経営企画部の入社3年目が担当するが、これだけの人間が関与する訳で(形式的にであるが)、色々揚げ足取りや、問題指摘が予想されるので、必然的に、内容は過去の原稿を踏襲した、無味乾燥なものとならざるを得ない。問題は、それだけではインパクトがないと言う事で、3年前から採用したスピーチの締めくくりの、「新入社員には、思い切り現場を掻き廻して欲しい」というフレーズである。

このフレーズは、「チャレンジする名門企業」というイメージで、新聞や系列のテレビ局に評判が良い。従って、経営者は必ず入れたがる。

困った事は、「新入社員には、思い切り現場を掻き廻して欲しい」というフレーズが株主へのIRであったり、対顧客PRである事を理解せず多くの新入社員が職場で実践してしまい、不幸な結果になる事である。職場は、勿論様子が判るまでは、「余り波風を立てず、手を焼かすなよ」としか考えていない。

結果、入社式の時は目を輝かせていた新入社員が5月の連休明けともなれば、死んだ魚の様な眼をして出社してくる事となる。5月病なのではないのである。

第二条。早起きは三文の得

部長、事業部長という中高年は、大体早起きである。別に勤勉というよりは、生理的に早起きなだけである。家でごそごそしていると、五月蠅いと配偶者から怒鳴られるので、大体7時過ぎに出社して来る。出社すると、PCを開けてメールを先ずチェックするのであるが、この時にコーヒーを飲みたがる。

そこで、6時30分に出社して「自分が飲みたいから」という名目で、コーヒーを準備しておく訳である。コーヒーを飲んだ後で、偶々時間が空いており、虫の居所が良ければ新入社員を席に呼び、担当業務とか当日の予定を聞く筈である。そして、訪問予定先が以前から気にかけていた企業なら、突然同行するとか言い出すかも知れない。社会人の競争とは、本来上司の時間の取り合いであるから、競争に勝利した事になる。

ここまで、上司に胡麻を擂るのか?という疑問を抱かれる方も多いと思う。ファクタ出版・阿部代表の昨日のブログ、オリンパスの鑑、百武鉄雄秘書室長を褒め讃える、を是非一読願いたい。名門オリンパス社の中枢、秘書室長に迄登り詰めて尚、前会長のペットの世話迄かいがいしくやっている。

オリンパスは何も特殊な会社ではない。日本の歴史ある名門企業なんて大体、五十歩百歩ではないだろうか?

第三条。EXIT(退社時期)を明確に

以前の記事、EXIT(出口戦略)の不在に就いて考えてみる、で説明した通り、これからは終身雇用のルートを歩む事は極めてリスクが大きく、損である。入社時に退社の時期をある程度決めておくべきと考える。

一方、私はこれからの若者は職を得ても、3~5年で一旦退職し、転職の節目ごとに自分の棚卸を実行し、時価を認識すべきと考えている。即ち、初めての就職に際しても予め3~5年後の、EXIT(出口戦略)を設定し、それまでの達成目標や転職時の希望年収を確定しておくべきと考えているのである。企業経営者が株式市場における自社の株価に責任を持つように、個人は労働市場に於ける自分自身の市場価値に責任をもつ時代に来ていると思うからである。従って、勤め先等は所詮自分の市場価値を上げる為の手段、道具に過ず、同じ物を永久に使い続けるなど有り得ないと考えるのである。

第四条。会社の制度を徹底的に利用して能力を高める

大学の4年間をそれなりに頑張ったとしても、矢張り限界があると思う。大きな企業はそれなりに研修制度が充実しているので、これを目一杯活用すべきである。

私の場合、入社時英語含めて語学は全く駄目であったが、1年目英語。2年目は4月にドイツ留学が決まったので、出発の翌年2月まで週3回ベルリッツに通わせて貰った。授業はテンポが速く、付いて行くのが大変であったが、御蔭で早い時期にドイツの大学に入学出来た。

帰国後も通信教育含め、色々制度を活用させて戴き勉強させて貰ったと思っている。又、当然実際の業務でも随分と役に立った。

第五条。会社や仕事への不満は言わず、仕事に打ち込め

私の経験からいうと、仕事に打ち込んでいる若手が、会社や仕事への不満をいう事は先ずなかった。業務改善の提案や営業で新たな取引先拡大や、商流構築の為の企画が全てである。

一方、仕事が出来ない(早い話無能)、或いは真面目に取り組まない若手は、兎に角、会社や仕事への不満が多い。何分、仕事に手をかけないから時間が余る。従って、組織や上司の揚足取りにうつつをぬかす。

今一つの理由はこの手合いは何故か定年迄勤め続ける積りなので、自分に取って不都合な会社制度や組織の改修に熱心である。オーダーメードのスーツでもあるまいに組織や制度が個人にぴたっと合う訳がないのに、未熟でそこらが理解出来ないのである。

最後は、昇進が同期に遅れ、後輩にも追い越される。当然、不平、不満が募るので会社批判となる。正に負の連鎖である。こういう手合いは、大体30代ともなればあちこちの組織をたらい廻しにされ、次第に居場所をなくし退職となる。不平不満を頻繁に言い出した頃が、後から振り返れば負のスパイラル突入という事が多い様に記憶している。

第六条。過去から現在への経緯と、現状分析から将来を予測する

これは、大変重要だが難しい仕事である。従って、若いうちから取り組み、習い性にする必要があると考える。具体的な例として、震災の翌月の私のアゴラ記事、東京電力をどうするか?、を参照する。記事にて、政府施策の問題点と、この施策を採用した場合、将来起こるであろう惨状を、提示している。

そして、今回の記事、東京電力が酷い事になっているで、5月の予測が全て的中している事を説明すると共に、取るべき対応を提案している。会社勤務でもやる事は同様である。

第七条。常に当事者になった積りで考え、発言する

部内会議を開催したとする。一番多いのは、何も発言しない部員である。何も考えていないから、いうべき何物も持っていないのである。それでいて、不平不満は人並みに多い。

次に多いのは、例えばシステムを効率化し現在3名の担当を2名に減員するとなればオペレーターの女性が、火曜日の料理教室や、金曜日のフラワーアレンジメント教室に行けなくなると騒ぎ出す。要は、自分の事しか見えていない訳である。

最後は、当たり障りのない評論家的コメントである。これは、入社以来年齢を経て「空気」を読む事を覚えた中堅に多い。

求められているのは、勿論例え新入社員であっても部長になった積りでの考え抜かれた発言である。

営業部署であれば、顧客購買部の担当や、購買部長の立場で考える事も無論、必要である。

具体例として、これも過去記事の中部電力はどう対応すべきか?を参照する。

私はこの記事を書くに際し、自分が「もし中部電力の社長であったらどうすべきか?」で考えてみた。その結果がこの記事であり、予測は全て的中している。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役


アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

関連記事