「政策のデスバレー」の架橋のために

2012年01月02日 18:52

ITの世界に「デスバレー」という言葉があります。研究開発はすぐれているのに商品化がうまく行かず、利益に結びつかないことですが、政策の分野でも同じような現象が起きています。たとえば世代間格差の問題について経済学者の認識はほぼ一致しているが、政治家は与野党ともにこの問題にふれようともしない。


いま緊急の問題は、エネルギー政策です。福島第一原発で重大な事故が起きたことは確かですが、それは日本のエネルギー政策を変えるほどの出来事なのか。死傷者が1人も出ていない事故に、メディアはいつまで騒いでいるのか。被災地の線量は健康に問題がないと専門家が言っているのだから、除染や賠償にかける巨額のコストは実害の出ている被災地の援助に回したほうがいいのではないか。

――といった常識的な話をすると「原子力村」だとか「御用学者」だとか罵倒されるため、専門家は口を閉ざしています。このため科学的な知見が政策に反映されず、11万人もの被災者がいまだに帰宅できない。健康被害を減らす役に立たない除染が行なわれ、数兆円のコストと行き場のない大量の廃棄物が生まれる。

こうした状況に対して、メディアが何の役割も果たしていないどころか、朝日新聞は「原発ゼロ社会」なるキャンペーンを張り、NHKはICRPが原子力産業の圧力で線量基準を緩和したというデマ番組を流すありさま。民放はワイドショーで放射能の恐怖をあおり、ネットメディアはニセ科学者に記者会見させて「福島で40万人が死ぬ」などというデマを拡散しており、このままでは被災者にとっても納税者にとっても莫大な損失が発生します。

そこでGEPRでは、学問的なチェックを受けた一次資料を提供し、科学と政策を架橋する素材を提供します。原子力に批判的なみなさんの投稿も歓迎します。科学的な根拠にもとづく論争を期待します。投稿は事務局まで。


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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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