センター試験は抜本改革を --- 前田 陽次郎

アゴラ編集部

今年の大学入試センター試験はトラブル続発で、「過去最悪のセンター試験」とも言われる。

もちろんトラブルは起こすべきではなく、再発防止策を考えねばならないが、そのためには、何故トラブルが多発するのかという原因をはっきりさせなければならない。

ここで、「運営のやり方が悪かった」と言うのは簡単であるが、現実には、「トラブルを起こさないのは、今の体制では不可能である」という状況になっているのではないだろうか。


今のセンター試験の最大の問題は、「試験制度が複雑すぎる」ということである。

以前の共通一次であれば、受験生は全員5教科7科目(末期には5科目)を受けていた。受験科目も受験時間も一緒。実にシンプル。こうした制度であれば、トラブルは少ないだろう。

ところが共通一次が大学入試センター試験に変わり、私立大学も参加し、さらに各大学が要求するあらゆるニーズを満たそうとしたために、試験制度がどんどん複雑化していった。そして、試験制度を全く理解していない大学教授が試験監督をしているので、トラブルが起こるのは、もう防ぎようのない状況になっているのではないかと思う。

センター試験の監督をしっかりしろ、という意見を言う前に、一度試験官の気持ちになって欲しい。

センター試験の試験官には、センター試験を利用する大学の教員が、沢山動員される。たとえば東京大学の教授でも、試験官として心付け程度の日当を貰って動員されている。

大学教授にとって、試験監督というのは、雑務以外の何物でもない。それも、自分の大学の入試ならともかく、センター試験の受験生というのは、どこの大学を受験するかもわからない。東京大学でセンター試験を受ける受験生のうち、東京大学を受験する生徒は、果たして何人いるのだろうか。こういう状況の中で、東大教授に細心の注意を払って試験監督をしろ、というのは、酷なことであるし、それを要求するのは、個人的にはかわいそうだという気がする。

また、受験会場は大学だけではない。高校を会場にしている所もある。東大教授が都立高校にセンター試験の監督に出向いているという現状は、人的資源の無駄遣い以外の何物でもないだろう。

少なくともセンター試験はトラブルの起こりにくい制度設計に変更して、センター試験で対応できないものは独自の2次試験で対応するか、他のテストを活用するという方向に行くべきだ。

例えばセンター試験のトラブルの最大の原因なのは、英語のヒアリングだが、果たしてセンター試験でヒアリングを入れる必要性はどの程度あるのだろうか。選抜内容としてヒアリングを必要とする大学は、2次試験でヒアリングを行うか、TOEICを利用するなどの方法を取ればいいことである。

前田 陽次郎
長崎総合科学大学非常勤講師