エルピーダメモリの会社更生法申請が焙り出すもの

2012年02月28日 06:48

朝日新聞が伝える所では、エルピーダメモリが会社更生法を申請したとの事である。

倒産によりエルピーダ株は3月28日付で上場廃止になる。借金などの負債総額は昨年3月末時点で4480億円にのぼり、国内の製造業の倒産では過去最大だ。2009年に国が産業活力再生特別措置法の支援企業に認定して公的資金300億円を出資しており、経済産業省によると、倒産で最大280億円が戻ってこない可能性がある。この分は国民負担になるおそれがあり、国の支援が正しかったかどうかも問われる。


エルピーダメモリの破綻は日本の現行システムの課題、問題点を焙りだしたと思う。就いては、一度きちんと検証して今後に備えてはどうだろうか?

先ず以てエルピーダメモリ誕生の経緯であるが、早い話、飽く迄推測であるが、どうも望まれての誕生とは言い難い。

DRAM事業を持て余したNECと日立が合同で1999年に「NEC日立メモリ」を設立したのが最初の様である。こう言っては関係者に大変失礼かも知れないが、お荷物の事業と、従業員を「NEC日立メモリ」と言う泥船に乗せ、本体から切り離したと言う所ではないか。

更に2003年三菱電機よりDRAM事業を譲受け、開発エンジニアを受け入れているが、三菱電機の思惑はNEC、日立と同じ筈である。

問題は、何故こんな手の込んだ事をするに至ったかである。

背景には解雇規制があったと推測する

仮に「解雇規制」がなければ三社とも不採算事業であるDRAMから撤退し、余剰となった人員は解雇して決着したのではないか?結果、エルピーダメモリも誕生せず、問題を21世紀まで持ち越す事もなかった筈である。

1999年に解雇される筈であった社員達が、2012年まで勤め続ける事が出来て本当に良かったのであろうか?

悲喜こもごもと思う。

仮に1999年時点で50才であれば、無事退職金を満額受領し定年退職出来ている。勝ち組と言って良いだろう。

一方、一流大学理系の大学院を卒業したばかりの25才の社員に取ってはどうであろう?

25才で転職の理由が、勤め先の事業撤退と言う事であれば、有能な人材を欲しがるITベンチャー等から引く手数多で、転職しておれば今頃はCTO、年収2,000万円超というのもあり得るのではないか。

一方、エルピーダメモリに転籍したとすれば、その後13年が経っており、現在38才で最早潰しが効かぬ年齢である。更に具合が悪いのは、DRAMという将来がない分野にしか職務経験がないと言う、何とも困った話である。

「飼い殺し」、「社畜」という言葉があるが、その悲劇を身を以て具現化している気がする。そして、その業の深さに言葉を失う。

矢張り、解雇規制は一日も早く撤廃すべきと思う

次は、国民負担による出資の是非である。

枝野経産相発言を読む限り、既に280億円の国民負担は既定事実化している様である。

半導体大手エルピーダメモリの会社更生法適用申請で最大280億円の国民負担の可能性が生じたことについて、枝野幸男経済産業相は27日、「大変残念」と述べた。ただ、出資を決めた2009年当時の経産省の判断については「やむを得なかった」と述べ、妥当だったとの見解を示した。

そもそもの話で恐縮であるが、「省益」ありきの経産省に正しい判断が出来るのか?という根本的疑問がある。財源を確保し、天下り先を見つけ、そして金を突っ込む事以外頭にないのではないか?

それ以外に考えるとするならば、精々国費投入のニュースを利用してインサイダー取引を行うような破廉恥極まりないくらいではないのか?

枝野経産相は早々に「妥当だった」と胸を張っている。しかしながら、そう言うのであれば、「妥当だった」の根拠を具体的に示すべきであろう。

280億円を溝に捨てる事を国民が許容すれば、今度は東京電力の国有化できっと何兆円もの損を出すに決まっている。

昨年4月以降、何度も繰り返し恐縮であるが、無規律な東京電力の国有化は絶対やるべきではないと改めて思う。

間違いを繰り返す役所と、それを指導出来ない政府を目の当たりにして思うのは、昨日記事に書いた大きな政府か小さな政府かの選択である。

政府の関与は必要最小限に留め、「市場の声」を素直に聞く様な柔軟で強靭な統治システムを再構築せねば、日本の破綻は左程遠くないのではと危惧する。

山口巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役

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