8日に発表された”新しいiPad”の特徴についていろいろ報道されています。私が最も気になった点は通信方式で、「4G+Wi-FiタイプはLTE用の700MHz帯に対応している」という点です。
700MHz帯といえば今年の夏頃に携帯電話事業者に割り当て予定です。ソフトバンクが先日900MHz帯を獲得した時に早くも孫社長が「700MHz帯の申請はしない」と明言していたのはおそらくソフトバンクの主力製品であるiPhoneとiPadが700MHz帯に対応していなかったからだと思います。だから「iPhoneとiPadで使える900MHz帯が手に入ればiPhoneとiPadで使えない700MHz帯なんかくれてやる」ということでしょう。
しかし”新しいiPad”は700MHz帯に対応しました。これで次のiPhoneも700MHz帯対応になることはほぼ決まりだと思います。実際に700MHz帯が使えるようになる2015年には、ほとんどのiPhoneとiPadで700MHz帯が使える機種に置き換わっていると思います。つまりソフトバンクが700MHz帯への参入の申請をする十分な動機が出来たわけです。ドコモもauも以前から800MHz帯というプラチナバンドを割り当てられており、さらに今年700MHz帯を割り当ててもらおうとしているわけです。それならば900MHz帯という初めてのプラチナバンドを獲得したばかりのソフトバンクが700MHz帯に手を上げるのも当然と言えるのではないでしょうか。
ソフトバンクが700MHz帯への参入を申請すると、総務省と携帯電話事業者の間の予定調和(900MHz帯はソフトバンク、700MHz帯は3つのスロットを三社{イーモバイル、ドコモ、au}で仲良く割り当てる)を乱すことになりかねません。総務省の機嫌を損ねる事になるかもしれません。
しかしソフトバンクが700MHz帯への参入を申請して総務省の機嫌を損ねたとしても、900MHz帯はもうすでにソフトバンクが獲得していますし、700MHz帯の次の4Gの3GHz帯は今国会で提出されている電波法改正案で電波オークションすることが決まっていますから、総務省の機嫌を損ねようが損ねまいが最高価格で入札すれば手に入ります。それならば申請してみる価値はあるのではないでしょうか。
やっぱり総務省やNTTと喧嘩してこそのソフトバンクであり、孫正義ではないでしょうか。
ヤフーがADSL事業参入のために機材をNTTの局舎の中に置こうとしてもNTT側のサボタージュでなかなか置かせてもらえなかった時には孫社長が自ら出向いて総務省やNTTに抗議をしました。
800MHz帯の割り当てがドコモとauのみでソフトバンクに割り当てられなくなりそうだった時は、新聞広告でソフトバンクに800MHzを割り当てるよう総務省にパブコメを送るよう訴えたり、ドコモとauへの800MHz帯割り当てを差し止める行政訴訟まで起こしました。
そういう喧嘩ができたからこそ今のソフトバンクがあるのではないでしょうか。
短期的には900MHz帯を獲得して多少電波が繋がりやすくなったとしても、総務省の密室談合割当に協力するようでは、本来のソフトバンクらしさ、孫正義らしさというものが完全に失われてしまい、ドコモやauよりも電波がつながりにくいだけの携帯電話事業者になり、ユーザー数もどんどん減少するような状態になっていくと思います。
ここはぜひソフトバンクが700MHz帯への参入を申請して、割り当てられなかったら孫社長が「密室談合割り当てだ!たいがいにせい!」と言って総務省相手に徹底的に暴れてみてはどうでしょうか。
ちなみに筆者は700MHz帯の割り当てはぜひオークションでと考えていますが、それができないならせめて電波割り当ての予定調和を乱すことによって割当が遅れれば何か新しい展開があるかもと期待をしている所存です。どうせ割当が遅れても実際に使えるのは2015年からです。
平成の龍馬(多田光宏)
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