朝日新聞のインチキ社説「大阪の卒業式―口元寒し斉唱監視」を読んで!

北村 隆司

社説は、新聞社としての立場・意見の表明をする最も重要な場で、主張の質と論調の一貫性がその心臓部であり、顔に当ると言えましょう。

朝日新聞の「たちの悪さ」の第一は、合理的な論理と事実に基付いた主張で相手を説得するべき社説に、嘘を平気で並べる事です。


実例を挙げますと「大阪の卒業式―口元寒し斉唱監視」と言う派手な標題を掲げた社説で「個人の歴史観で見解が分かれる君が代をめぐり、最高裁は職務命令で起立斉唱を強制することに慎重な考慮を求めた」と1月16日の最高栽判決を紹介していますが、これは真っ赤な嘘で、判決文は「国歌斉唱時に起立を強制したとしても、個人の歴史観や世界観を否定するものではなく、又特定の思想の強制や禁止、告白の強要とも言えない」と、国歌斉唱起立を求める事は合憲であると言う物で、この社説は「判決文を書き換えた」悪質な詐欺的記事です。

判決は更に「学校の規律や秩序の保持等の見地から重きに失しない範囲で懲戒処分をすることは,基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する」と学校当局の「懲戒権」を認めた上で「懲戒は重きに失しない範囲」と懲罰の重さに慎重である事を求めたに過ぎません。

朝日のメデイアとしての第二の欠陥は、読者を意図的にミスリードする事です、
「起立斉唱条例を提案したのは橋下市長で、口元監視をした民間校長は、市長の友人の、弁護士資格を持つ41歳」と書いていますが、橋下市長には条例の制定権がない事や、校長の行為と履歴は全く関係ない事を充分承知しながら「条例」と「口元監視」の背景に、橋下市長とその友人の陰謀がある様な印象を与えるミスリード記事の典型です。

ところで、「松坂牛」をお好きですか? とまで読んで、「松阪牛」と書くべき処を「松坂牛」と書いた事に気がつく人が何人いるでしょうか? これは、中国の「偽商標事件」で実際に使われたごまかしですが、朝日新聞にはこの種の「偽商標」的記事があふれています。

「口元監視事件」で、世論は圧倒的に朝日の主張を支持している様ですが、殆どの人が「松坂牛」を「松阪牛」と間違えて食べてしまった結果では? と思います。この様な記事は、偏向報道と言うより北朝鮮的な詐欺報道で、是非、根絶しなければなりません。

入学試験などでは、教師が生徒を監視するのは当然で、ルールを守らない教師の監視は「口元監視」だと非難するダブルスタンダードも朝日新聞の常套手段です。

「君が代起立斉唱」や「起立斉唱の職務命令」を定めたのは、橋下市長ではなく大阪府教育委員会ですが、その事は批判せず、委員長の「そこまでやらなくてもいいのでは」と言うコメントを引用して「君が代斉唱」に関するコンプライアンスの適用を緩める事を主張したのも朝日です。その朝日は、昨年12月8日のオリンパス事件の社説では、下記の様なまともな主張をしています;
「規則の遵守を怠ったオリンパス事件が、日本の企業統治への信用を地に落とした。その信用回復を目指した法制審議会の会社法見直し案が発表されたが、経済団体の多くは、大事なのは形式でなく、個々人の資質や倫理観だ。各社の創意工夫と株主総会の判断にまかせよ。規則でしばりすぎると、活力ある経営ができなくなる等と一斉に反対した。同じ企業風土で育った者だけで固めるやり方が、チェック機能を弱めるのは当然だ。 オリンパス事件で企業統治の後進国という評価が広がったのに、『今のままのルールで問題はない』と言う財界の考えは納得できない」

これは、正論です。
然し、この正論は民間経営者には求めても、教員の場合は、コンプライアンスの対応をゆるめよと反対の主張をする朝日新聞は一貫性に欠けます。官尊民卑思想なのか、組合至上主義なのか? ダブルスタンダードなのか? いずれにせよ、誠に不思議な理屈です。

英国の人権宣言に端を発した近代民主主義国家の誕生以来、政治的指導者や公権力を行使する公務員は、個人と公人とで異なる権利義務の矛盾に常にさらされてきました。

一般市民と異なり、公共の利益の為には強制力を持つ公務員は、一般人以上の法的義務の厳守(コンプライアンス)や上司の命令に対する厳しい忠誠義務が求められています。さもないと、シビリアンコントロールが成立しないからです。

卒業式で、生徒や父兄が「君が代」に対し、起立斉唱を拒否する事は市民の権利に属しますので認められるべきですが、教員は公務員である限りそうは行きません。

公務員は市民としての権利の一部を失うと言う民主制度の鉄則が日本で理解されていない事が、国民の権利、義務を語る時に、常に起る混乱の原因かもしれません。

民主社会の成功、不成功は、仕事内容をマニュアル化出来ない政治的指導者の質にかかっており、その評価は全て国民に委ねられています。部下の公務員が命令に従わなければ、国民は指導者に成果を期待する事は不可能です。

多くの海外経験者を持つ社員を抱える朝日新聞が、この様な原則を良く承知していながら報道しない理由は、霞ヶ関との特殊な関係にあるのでしょう。

橋下氏の登場は、この点でも朝日にとって大きな脅威である事は理解できます。

「反ハシズム学者」は初歩的な誤りの目立つ「ぺけ品」に過ぎませんから、ほっておいても自然消滅しますが、虚やミスリードで世相を惑わす「悪質朝日」は、ネットなどで徹底批判するか、広告を引き上げでもしないと消えない厄介物です。

北村 隆司