シャープの賭け --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

シャープが台湾の鴻海精密工業と資本業務提携すると発表しました。鴻海がシャープの10%程度の株式を取得し、更にシャープの子会社である堺工場のシャープディスプレイプロダクトの株式の46%を鴻海の郭台銘董事長(社長)が個人で出資するようです。

このニュースに私としては非常に複雑な思いであります。


まず、シャープの経営スタイルに関して私はかなり以前から危機感を持っており、このブログでも折に触れてそのことを書いてきました。特に家電御三家と称されたソニー、パナソニック、シャープにおいて今回大赤字、社長交代という共通点があるもののシャープだけは抜本対策に欠けるということも書かせていただいておりました。

株式市場はこの資本提携ニュースを好感し、株価はストップ高までつけていますが、これはシャープのこのところの本業不振に対して資本不足が懸念されていたこともあり、あくまでも資金の目処がついたという意味での買い上げだと思います。その点についてはプラスなのでしょう。

しかし、鴻海グループとの密接な関係を結ぶという点で家電御三家からは離脱する事になった、とも考えるべきでしょう。それが長期的にメリットがあるのかどうか、これからじっくり考える必要があります。

鴻海グループは世界最大のEMS(電子機器受諾製造サービス)企業です。いまや家電は自社で作らず、プロダクトのマーケティングと設計を決め、後はEMSと称する会社に製造組み立てを依頼するスタイルになっています。アップルの商品もほとんどがこの仕組みで作られています。鴻海グループは台湾の会社ながら中国本土に主要工場を持ち、従業員100万人、売上げ約10兆円と桁が二つぐらい違う会社なのです。

この鴻海グループと資本提携した時点でいくつかの事が思い浮かびます。

まず、シャープの経営が鴻海に引っ張られることになるだろうということ。それは企業規模が違いすぎるということで主従関係が出来てしまうでしょう。

次に堺工場をなぜ、郭台銘董事長(社長)が個人でお金を出すのでしょう。鴻海で出せない理由がそこに存在するはずです。これはポジともネガともとれる非常に重要なポイントです。今後のニュースに注目すべきでしょう。

三番目にシャープは何を目指すのか、ということです。垂直型経営=製造から販売までの一環体制、にこだわった会社がその仕組みがワークしなくなったことが今回の大赤字の原因でした。そして、私はそこに、この会社の問題がある、と以前から指摘してきました。ですが、記事を見る限り、垂直経営を水平展開に変えるとの発言は見当たりません。ここが私の疑問です。

いづれにせよ、多すぎた日本の家電メーカーの再編が更に続くことになるでしょう。これは結構な事です。しかし、家電メーカーがサムスンを意識しすぎている気もします。確かに巨人サムスンは日本の家電メーカーをあっという間に抜き去り、いまやガリバー的存在ですが、日本のメーカーがそれを追いかけても意味がない気がしております。日本は単に製品を売るのではなく、総合的なサービスを提供する会社になるべきだと思います。

顧客は何に困っているのか、そこが完全に落ちている気がするのです。メーカーの目からみた製品の押し付けだとしたらどうでしょう?家電業界の生きる道はIBMがパソコン事業をレノボに売却してもなぜ、IBMは更に成長するのか、その辺に答えがある気がします。

少なくともシャープは完全に違う道を選ぶことを決めました。今後、御三家とは呼ばれなくなるでしょう。ですが、それが経営陣としての賭けであればそれはリスペクトするべきです。今後の活躍に期待したいと思います。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年3月29日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。