マスコミの心は腐っているのか

2012年04月25日 14:19

亀岡で起きた交通事故の過剰報道が問題になっている。被害者を収容した但馬救命救急センターのブログでは、次のように各社の報道を強く批判している。

マスコミ各社の記者たちは霊安室の前にカメラをかまえ,お帰りになるご家族の映像を勝手に撮影していました.再三にわたって取材はお断りの旨を伝えていたにもかかわらず,一番大切にしたい瞬間に,ズカズカと土足で割り込んできました.ご家族,医療者,関係者の心情を考えられないくらいマスコミの人間の心は腐っているのでしょうか.


私もきのう「報道ステーション」で、加害者の父親にインタビューしているのを見て、気分が悪くなった。最近、この種の交通事故や殺人事件のニュースが妙に増えた。池上彰さんもいうように昔は殺人や交通事故はローカルニュースで、よほど大きな被害が出るか凶悪でないと全国ニュースにはならなかったが、最近は単純な事件・事故が大きな扱いを受けるようになった。

これはテレビ局の経営が苦しくなって芸能人のギャラの高いドラマが減り、低コストで視聴率の取れるニュースやワイドショーの時間が増えたためだ。しかも地味で時間のかかる調査報道より、現場に行けば絵の撮れる事件もののほうが楽に数字が取れるので、一つのニュースに各社が殺到する。だからマスコミの心が腐っているのではなく、これは彼らが没落する前兆なのだ。

これは経済学で、強すぎるインセンティブの問題としてよく知られている。先日も池尾さんの書いていたマルチタスク問題というのがこれだ。企業でインセンティブを強めて営業成績だけで評価すると、セールスマンのように成果が数字で見えやすい仕事が偏重され、経理などの間接部門が軽視されて、仕事の能率がかえって落ちることがある。

同様にテレビ局の業績を視聴率という一元的なインセンティブで評価すると、数字の取れるニュースに片寄りやすい。これからさらに業績が悪化すると、収益重視のインセンティブは強まり、番組が劣化し、それによって視聴者が減る・・・という悪循環が進むだろう。本来はソーシャルメディアがこうしたバイアスを是正する必要があるのだが、ページビューを増やすインセンティブが強いため、上杉隆のように捏造も平気で行なうようになった。

朝日新聞やテレビ朝日の反原発キャンペーンも、センセーショナリズムで数字を取る営業政策としては正解だが、政治家がこうした歪んだ鏡で世の中を見る弊害は大きい。官僚は日常業務で一次情報に接しているが、民主党の政治家は情報源がマスコミ(特に朝日新聞)しかないので、そのバイアスに乗せられやすい。こうしたバイアスを中立化し、専門家の知見を政策担当者に伝えることが「アゴラ」やGEPRの目的である。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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