毎日新聞の伝える所では、大飯再稼働を目論む野田政権に対し橋下氏が対決姿勢を強めているとの事である。
どうも野田政権は、関西電力管内の電力需給が厳しい事から、橋下氏の再稼働反対を単なるPolitical Showと軽く見ていたのかも知れない。
政府側は当初、橋下氏は再稼働に強硬に反対しないと見ていた。関西電力管内の電力需給が厳しいことから、再稼働を事実上容認するのではないかとの情報があったためだ。
しかしながら、どうも橋下氏は今少し根本的な問題、詰まりは野田政権の政策決定に至るプロセス自体に重大な欠陥があると認識している様である。
野田佳彦首相と枝野幸男経済産業相ら3閣僚が6日に「安全性に関する判断基準」をまとめてから、橋下氏は批判を強めていった。安全宣言を出した後の13日には「再稼働にストップをかけるためには、国民が政権を倒すしかない。次の選挙で民主党政権に代わってもらう」と語り、次期衆院選の争点にする姿勢を鮮明にした。批判の中身も「慌てて作った暫定的な安全基準だ」(6日)などと技術的な内容から、最近は「安全宣言した手続きがおかしい。統治機構の危機だ」(16日)と野田政権の再稼働に向けた手続きへと移っていった。
野田政権が認識せねばならないのは、野田政権と橋下氏の間に横たわる「埋まらぬ溝」はそのまま、野田政権と国民の間の「埋まらぬ溝」であると言う冷徹な事実である。
このままでは、現政権と国民の意識は永遠に平行線となる。どうすれば良いのであろうか?
原発問題は菅前首相が恣意的に浜岡原発を停止させた事に起因する。
停止後もうすぐ一年を経過する今、この得失を冷静に分析した上で、国民に「大飯再稼働」を説明すべきと思うのである。
国内の原発がほぼ全て停止するに至り、原油と液化天然ガスの輸入増が必然となり、これが貿易赤字の元凶とされているが、本当なのであろうか?
財務省公表の平成23年度分輸入速報値を参照する。
何と大幅に輸入を増やしたと思い込んでいた、「原油および粗油」は数量で▲2.4%とマイナスである。しかしながら、価格ベースでは21.9%増の11.9兆円となっている。
成程、下記WTIの価格推移を参照すれば納得出来る。
問題は液化天然ガス(LNG)である。
LNG輸入数量は8318万トンで前年比17.9%増。一方、支払い金額は5.4兆円で前年比52.2%増。つまり5割増となっている。
露骨に言ってしまえば、夏場の繁忙期を前に電力会社各社はLNGの手当てをせねばならず、結果足下を見透かされ長期契約の何と3倍の価格で売りつけられたと言う事である。
勿論、これは電力料金の値上げと言う形で将来国民が負担する事になる。
日本国民も、もう良い加減に菅前首相の「一発芸」、「瞬間芸」の見物料が随分と高くついた事を理解すべきではないか?
しかしながら、今後に就いては通常の長期契約でカバーされるので輸入金額は前年比大幅に下がる筈である。
又、世界的に見てアメリカ、ポーランド等ではシェールガス鉱区の発見、開発が加速しており、LNGの価格はWTIへのPaigを外れ下落すると予測する。従って、為替に依るが輸入代金増加の心配はないと思っている。
懸念されるのは、夏場の電力不足である。
橋下氏の強力なリーダーシップで「節電」を達成し、何とか今年の夏を乗り切り、一方、これと併行して、昨日のアゴラ記事で提案した、製造業の海外移転が進めば原発を再稼働せずとも乗り切れるのかも知れない。
野田政権は「先ず結論ありき」で国民に厄介な事を押し付けるのを止め、「定量的」に判り易い説明を心掛けるべきである。
山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役