技術的に増えた地上波のチャンネルを使わない手はない!

多田 光宏

先週5月8日にテレビ大阪で20時54分から「なんでも鑑定団」と「プロ野球 広島×阪神戦」が同時に放送されました。このような一つのチャンネルで同時に2~3番組を放送することををマルチ編成と言います。地デジ化に伴い可能になった技術です。

この件はニュースにもなりました。(ちなみに記事内の5月1日の中日×阪神戦では試合が延長しなかったのでマルチ編成は行われませんでした。なのでこの記事に書かれたマルチ編成が最初に行われたのが5月8日です。)


地上波でハイビジョン放送とSDTV放送を同時提供、テレビ大阪がマルチ編成

 テレビ大阪は2012年5月1日に放送するプロ野球の試合(中日×阪神戦)が午後8時54分以降も続いた場合にマルチ編成放送を行う。午後6時30分からはプロ野球中継番組を、午後8時54分からは「開運!なんでも鑑定団」をハイビジョンで放送する。プロ野球中継が長引いた場合、開運!なんでも鑑定団をハイビジョンで放送しながら、プロ野球中継をSDTV(標準画質)放送に切り替える。

なぜ8日のマルチ編成がニュースになったかというと、今まで行われてきたマルチ編成とは違うところがあるからです。

 これまで、地上波の周波数帯域(6MHz)でマルチ編成を行う場合、複数のチャンネルでSDTV放送を行うことが一般的だった。メーカー担当者とテレビ大阪の技術担当者がテストを重ねた結果、「地上波の6MHzでも1チャンネルでハイビジョン放送をしながら、もう1チャンネルでSDTV放送を行うことが可能と判明した」という。これを受けて、今回のマルチ編成放送を実施することにした。

つまり今まで地上波は一つのチャンネルにつき同時に放送できるのは、HDTV(ハイビジョン画質)の番組を1つか、マルチ編成でSDTV(標準画質)の番組を2~3つのどちらかだけだったのが、技術の進歩により地上波では初めてHDTVとSDTVでのマルチ編成が可能になったということです。

このニュース、あまり話題になってないようですが、とても大きいことだと思います。

なぜなら、技術的には新規参入が可能になったと言えるからです。この技術を使えば、一つのチャンネルで既存の地上波局が今まで通りHDTVで放送するのと同時に新規参入事業者がSDTVで放送を行うこと(すなわち技術的に既存の地上波局の放送に全く影響を与えることなく新規事業者が放送を行うこと)が可能になります。

民放のテレビ局の施設は私有財産ですが、使用している電波帯は国から割り当てられている国民の財産なのですから、チャンネルに空きがあるなら携帯電話のMVNOやNTTの施設を使った他事業者によるADSL事業などと同じように新規事業者が施設の使用料を払えば貸出をしなければならないのではないでしょうか。

たとえ新規事業者に貸し出さなくても、せっかく技術的に空いた地上波のチャンネルを未使用にしておくのはあまりにももったいなさ過ぎます。

例えば、地方局でキー局と違う番組を放送している時間は、HDTVで地元番組、SDTVでキー局を放送したり、SDTVでドラマ、アニメの再放送したりと活用方法はいくらでもあるはずです。

総務省は電波の有効活用の観点から、全国のテレビ局にこの技術を用いて新規参入を認めるか、自局で別の番組を放送するよう指導すべきでしょう。

注)この技術は設備の入れ替えをしないと使えないので、すぐに全国で使えるというわけではありません。

平成の龍馬(多田光宏)
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