電気自動車の「充電方式戦争」 --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

ちょっとタイトルがマニアックかもしれませんので内容は平易に簡単に述べながらこの持ち上がりつつある問題を提起したいと思います。

私の事業の一つに駐車場運営部門があります。その一環で今、その管理する駐車場に電気自動車用の充電器を設置する検討を進めており、イギリスの会社と日本の会社がアプローチしてきています。なぜ充電器設置を考えたかといえばこの駐車場の利用者は主に500室のホテル客と集合住宅やアパートメント約400戸分の住民であるからです。


ホテルの客からすれば充電器があれば電気自動車で宿泊しに来ることも可能でマーケティング効果があります(可能ですというのは実態は後述するようにほとんど利用されないと思っています)。住民は住民用駐車場を取り仕切る管理組合が充電器を積極的に設置しないので公共駐車場エリアに充電器があれば市場開拓につながると考えています。

さて、せっかく前向きの検討をしていたところで数ヶ月前より雲行きが怪しくなりました。それは充電方式が日本型と欧米型で相違する方向だからです。日本で既に走っているEVの充電式は「お茶でも…」の語呂から名づけたチャデモ方式をとっています。一方、GMやVWなど欧米主要メーカーはコンボ方式をとることになっています。なっていますというのはこれからそうするということで2013年ごろから市場に出回るようです。

では充電器の互換性ですが、プラグが違うのみならずどうもシステムが違うようですので簡単ではなさそうな雲行きなのです。自分の家で充電するには自分の車のプラグと合致していれば良いのですが、公共の場の充電器となればそうはいかなくなるのです。つまり、二種類置け、と聞こえるのです。ここが私がまだ調査しているところです。

雰囲気としてはVHS対ベータ戦争(最近この話をしたら全く通じなかったのでショックを覚えています)に近いものではないかという気がします。

では、電気自動車に対する本気度ですが、私は欧米、特に北米ではあまりその気がないのではないか、という気がしております。理由は電気自動車の価格増とガソリン代節約の差異が経済的に「圧倒的」な違いを生み出さないことが主に上げられますが、私はやはり、チャージする手間と時間が北米では「受けない」気がしております。つまり、個人的には電気自動車は普及しない気がします。また、使用済み電池そのものの処理も再生技術が進んでいるとはいえ不安感があります。

環境にやさしい、あるいは燃費効率の良い車は今、さまざまな形式のものが出ており、中国ではVWのTSI方式というダウンサイズさせるものが受けていますし、北米では私は天然ガスやエタノール仕様の車がもっと出てくると思います。BMWは水素自動車の開発が進んでいます。

また、環境そのものへの対策は車に乗らないとかシェアをするという発想のほうが北米では強く、土地が広く、移動距離が長い北米には現在の電気自動車が必ずしもパーフェクトではないかもしれません。

電気自動車が日本の新たなるガラパゴスになる可能性はなきにしもあらずですが、先日来話題になっている1~2人乗りの超小型ビークルなどはまさに日本ならではの発想かと思います。

電気自動車が普及するかどうかは市場とその背景により全く変わってくると思います。電気自動車だから誰でも飛びつく、と勘違いしそうですが(私もはじめはそう思いました)。もしかしたら日本だけのモデルになるかも知れずかなり注意して当たらないといけないかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。