日本全体の活力につながる邦銀の信用回復 --- 岡本 裕明

2012年06月29日 10:04

日本の銀行、特にメガバンクの体力が回復してきています。ご承知通りバブル崩壊の痛手をもろにこうむった日本の銀行はその後、不良債権の処理に延々と時間を要し、公的資金の注入により経営の自由度も限られ、海外ではジャパンプレミアムなるものが発生し、邦銀にとっては苦しい忍耐の20年だったと思います。しかも近年になって利益体質を回復していたものの「法人税を払っていない」という嫌味すら言われておりました。


その間、2008年の金融危機からアメリカの銀行は軒並み体力を落としボルガールールという厳しい規制が計画される中、健全性重視の結果自己部門での利益を出しにくい状況が生じてきています。その結果を先取りするようにウェルスファーゴのようなリーテールバンクが成長しアメリカで上位にランクされてきました。

欧州の銀行は説明するまでもなく格下げに次ぐ格下げで資金調達にも苦労する状況となった結果、当然ながら金融機関としての信用力は下がり、ドル建て資金の調達力も弱まりました。それは欧州銀行のドル建て貸付のデレバレッジ、つまり、与信縮小となり、韓国など欧州系銀行に頼っていたところにも思わぬ余波がやってくる事態になっていました。更にBIS規制を考えれば資産を圧縮せざるを得ず、ロイヤルバンクオブスコットランドの航空機リース部門の三井住友銀行による買収などが起こったわけです。

今年3月のメガバンク3行の純利益合計は1兆9843億円。オマケにりそなを含むメガバンクは晴れて法人税を払える状況となりました。一歩先を行く三菱UFJについては利益が1兆円を僅かに下回るところで着地していますが、頭取のインタビューからは「1兆を越えると目立っちゃう」という笑いを隠し切れない雰囲気すら漂うのです。

通常、銀行がここまで儲けると「銀行やりすぎ」論が出てもおかしくないのですが、それが出ないのは他の産業の元気がなさ過ぎることが最大の原因かもしれません。特に銀行とミラー関係といわれたのが家電御三家の決算で「この1兆6000億円の赤字はメガバンクの利益と相殺」とも揶揄されました。

更に銀行が儲けてくれればこれからは法人税がどんどん入るわけで税収減に悩む財務省としてはこれほど嬉しいことはなく「銀行様さま」ということではないでしょうか?

実はもう一つ大事なことは株式市場。長年の経験からみると銀行株が元気なときは大体株式市場は活況になります。今回も欧州危機、ギリシャ問題の最中であるにも関わらず、直近の10日間程度でみても日欧米の金融機関の株式で一般的に上昇しているのは日本だけという状況です。結果として5月末を境に日本の株式市場全体はいわゆる「腰が強い」状態になっています。これは日本全体の株式が明らかに売られすぎの状況になっていたにもかかわらず「買い」に転換するきっかけをつかめなかったという雰囲気もありました。

以前にもこのブログで書きましたが消費税や大飯原発の再稼動という大きな課題が「動く」ことはプラスであるのです。一部の評論では消費税上げを決めたら株式にはマイナスというコメントも見られましたが、私は何をやっても動けなかった日本において6月に二つの変化をもたらしたというのは海外から見ればポジティブであるのです。

銀行の利益が大きく回復していることは結構です。しかし、問題も多く含んでいます。そのうちの一つが稼ぎは国債の運用から、というスタンスです。これは銀行業としての本質ではありません。銀行は本来貸し出しリスクに対する見返りがプレミアムとして乗っかってくるわけでそのリスク管理をベストな状況に維持することで本当の銀行らしさを取り戻すことになるかと思います。

その点ではまだまだ頑張っていただかなくてはいけませんが、稼ぐ力という点では他の業界を圧倒しているわけですから日本の利益リーダーとして邁進していただきたいと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年6月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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