「変なおじさん」の時代

2012年07月08日 09:00

皆さんの周りに、常識や慣習にとらわれない自由な発想のできるおじさんはいるだろうか。自由な発想のできるおじさんは、大きく二種類に分けることができる。

まず、世の中の常識や慣習を熟知しており、必要な時だけセオリーを乗り越えた発想もできる人である。いわば確信犯的に「ずれた発想」もできる人であり、周囲から優秀と評価されることが多い。

もう一つのパターンは、社会的・組織的な通常のルールにあまり興味がなく、常時、豊かな発想をしている天然型のタイプである。周囲からは優秀というよりも「変なおじさん」、「天才」として認知される。

●加藤一二三という奇跡


先日、「将棋世界7月号」を読んでいて驚いた。加藤一二三(ひふみ)九段が新手を繰り出して快勝したというのだ。加藤九段は現在72歳の現役最年長プロ棋士である。14歳(最年少記録)でプロになって以降、60年近くにわたってクリエイティブな指し手を追及し続けている。すごいとしか言いようがない。

長年トップクラスで活躍されていたし、名人経験者でもあるのだから、今さら金や名誉が目的ではないだろう。探究心という内的な動機がクリエイティビティの源泉なので、いつまでも尽きることがない。こういった人材はイノベーションが必要とされる今の日本において示唆に富む。

加藤九段は冒頭の分類でいえば「変なおじさん」、「天才」タイプと考えられる。下記のとおり、常識や慣習では考えられない行動が多い。

加藤九段は「待った」の反則をとられたことがある。普通のプロ棋士であれば、指した後に悪い手だと思っても、世間体やルールを気にして「待った」なんてできない。当時、私はテレビで対局を見ていたが、加藤九段は深く集中しており、指が駒から離れた後に思わず指し直してしまったという感じであった。集中しすぎて指し手を無意識のうちに変更してしまうなど常人では考えられない。

また、加藤九段は、対局中に対戦相手の背後から盤面を見つめることがあるらしい。これも普通のプロ棋士であれば、相手に気を使って中々できることではない(対局中に背後から覗き込まれたら気持ち悪いだろう)。普通の棋士は脳内で盤面をひっくり返すか、対戦相手が席を外している最中に回り込む。

その他にも、ネクタイが異様に長いなど常識では計り知れない行動が多い。

加藤九段には、これらの奇行をはるかに超える将棋への貢献・実績がある(加藤九段が発案・深掘りした攻撃スタイルは多い。加藤流と呼ばれる布陣もある)。だから、尊敬されるし、奇行も含めてファンから愛されている(私も好きだ)。

●「変なおじさん」を受け入れる準備はあるのか
これまで「変なおじさん」は、芸術家、学者、もしくは加藤九段のような勝負師など限られた職業で能力を発揮することが多かった。しかし、「変なおじさん」の自由な発想はビジネスの世界でも重要である。本気でイノベーションを起こすのであれば、行儀のよい優等生ではなく、「変なおじさん」を上手に活用しなければならない。

「変なおじさん」に活躍してもらうためには何が必要だろうか。企業の仕組みで一例を挙げると、管理職やマネジメント層に昇進しなくても地位や給与が上がっていく仕組みが必要だ(「変なおじさん」にマネジメントをやらせると悲劇が待っている。1プレイヤー、1担当者、1アイデアマンとして能力を発揮してもらう必要がある)。

本当に新しい発想であれば、既存の企業で働くのではなく、ベンチャーを立ち上げる方が良いのかもしれない。この場合も、「変なおじさん」のアイデアに共鳴し、かつ失敗も許容できるリスクマネーの存在などが不可欠である。

「変なおじさん」を上手に活用できる国・組織はイノベーションを多く起こし、繁栄を享受できる。特に我が国では、生産年齢人口が減少しているのだから、労働者の投入量ではなく、新しい発想による成長がより重要になっている。「変なおじさん」の活用競争という観点が必要だ。

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なお、本稿では、「変なおじさん」で記述を統一しているが、別に「変なおばさん」でも良いし、若くても構わない。発想の豊かな「変人」を広く指していると考えて欲しい。

高橋 正人(@mstakah

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