恒例の第一週金曜日のアメリカ雇用統計の発表。当初から期待が低かったにもかかわらず、その低い期待にすら届かないネット8万人増で着地した6月の雇用増。株価にも響いていますが、むしろ一番ダメージが大きいのはオバマ大統領ではないかと思います。失業率も8.2%で変わらず、この3ヶ月間は本来雇用を支えるべく12万から15万のネット増に届かず、実質的な雇用悪化になっています。
私の年初のブログでオバマ大統領の再選を十分にサポートするには失業率が夏までに7%台まで改善していることが重要とさせていただきましたが、0.2%ポイント未達の状況でオバマ苦戦のシナリオがここで出てきました。ロムニー氏は選挙資金もオバマ大統領を凌ぐ勢いで集めており勢いを増しています。もう一つ、ロムニー氏のウィークポイントといわれる外交に関してイスラエルのネタニヤフ首相と近く会談すると発表されています。
このニュースは日本ではさらっと扱っていると思いますが、極めて大きな意味があります。一つは在米のユダヤ系票を取り込むこととネタニヤフ首相が今もっとも懸念しているイラン問題についての意見交換をする可能性でロムニー氏の将来の支援を取り付ける可能性があるということです。これは今小康状態になっているイラン問題に再度刺激を与えることになりますのでセンシティブな状況が想定されます。
一方、アメリカ経済回復については自動車販売のように指標遅効性のあるものはまだ健全ですが、現時点の状況は黄信号が灯っているとみられます。よって、アメリカの経済コメンテーター、銀行レポートなどはこぞってQE3が現実のものになりそうだと書き立て始めました。バーナンキ議長は「無策」の烙印を押され、議会で突き上げを食らわないためにもご本人にしてみれば「渋々」かもしれませんが、何らかの対策を行わざるを得ないというのが経済と政治の両面から見た私の予想です。
さて、カナダ、バンクーバーに目を移しましょう。不動産市況につき私は警告を出しておりますが、発表された6月の中古の不動産取引件数は前年同月比27.6%減で完成在庫に対する倍率は7.8ヶ月に達してしまいました。これは完全なる買い手市場と化しています。
その上、私が問題視しているのは新築物件の売れ残り物件が2006年ごろは極めて低水準だったものが今や2500軒の水準を越え、12年振りの水準に上がっていること、及び、2012年の新規供給が18500軒の水準になっています。これは明らかに2009年~2010年頃のリーマン・ショック後の景気リカバリーの際に計画した不動産開発が雨後の竹の子の状態で市場に出回ってきていることであります。
住宅ローンの厳格化も7月より実施されバンクーバー不動産市場は逆風が鮮明となってくるはずです。同じことはトロントにもいえます。市場は中期的な下げトレンドを形成し、数年間の回復は見込めないと見ています。
アメリカ、カナダは経済成熟国として今後、日本と同様、低成長時代に突入すると見ています。よって物価、不動産価格なども成熟期、つまり、落ち着いたものになるはずです。カナダは高齢化問題もあり、金利も現在の水準前後を長期にわたり維持するのではないかと感じています。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月7日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。