JALの再上場、是非論から航空行政の見直しへ --- 岡本 裕明

2012年07月20日 07:43

JALの再上場が早ければ9月にも行われる可能性があります。

これに対して賛否両論で自民党の国土交通部会や全日空は反対、国土交通相やスカイマークは賛成など意見が分かれています。

普通、民間企業の再生は喜ばしいことであり、3500億円の公的資金を投入したのですから国としては早い時期の投下資本の回収が出来ることは悪い話ではないはずです。ではなぜ反対の声が上がるでしょうか?


まず、全日空が反対するのは単にライバルが身軽になって再上場し、資本の力を再び見せつければ不公平であるという考え方でしょう。今から十年前にはたくさんのゼネコンが倒産しましたが、上場していた多くの会社は何らかの形で再生し、昔の名前であっさり再上場したところもあります。そのとき、某大手ゼネコンの社長が恨み節のように「ゾンビ」とコメントしていたことを良く覚えています。この言葉には本来なら死んで棺桶に入っているはずなのに再びライバルとして戦わなくてはいけない悔しさかもしれません。侍がチャンバラで斬っても、斬っても相手が減らなければキリがないのと同じで勝負としては面白くないわけです。

もう一つの意見はJALの公的資金の投入は正しかったのか、というストーリーの蒸し返しかと思います。これについては厳密に定義がないわけでどのような規模のどのような業種なら公的資金を投入できるかという明白な線引きはありません。よって、当時の判断に委ねられるわけですが、JAL救済を規模とかアメリカの航空会社を比較することでその救済の是非を問うのはやや思慮に欠けるかもしれません。

私の認識では確かに北米では航空会社の倒産は誰もびっくりしないような話であり、政府が公的資金を投入したという話は聞きません。ですが、アメリカにおいて航空産業は日本の比ではなく、広い国土と航空需要を考えれば競争原理による淘汰と再生は民間ベースで行っても大きな影響はありません。

ところが、JALの場合は二大航空会社の一つであり、日本の98もある空港を全日空とシェアしながら国土交通省の指導のもと、不採算路線でも飛行機を飛ばす半は政治的規制の中でのビジネスであったと考えています。しかもその規制はJALがフラッグシップとして重い負担を背負ったと記憶しています。

もう一つはたくさんあったJALの組合のしがらみ。これも半官半民の航空会社として政府と一心同体的な成長を遂げる中で本来あるべき民間企業の厳しい競争とは一線を画する状態を続けてた結果が倒産へと繋がった一つの理由であります。よって、当初の経営に深く関与した政府の経営への責任は当然残ったわけでそれゆえの公的資金の正当性があったと考えています。

では、今更、自民党国土交通部会が何故JALの上場を反対するのでしょうか? 私には全日空からの政治的要請のようにしか見えません。僅かな記事の文面からは「競合他社と公平に競争する条件が整っていない」とし、「地方路線の維持などを通じて利益を社会還元することを求める」としています。私には赤字路線をまた作れといわんばかりのこの部会の提言にはまったく持って理解不能であります。

今、JALと全日空が考えなくてはいけないのは両社の棲み分けだと思います。今後、両社のLCC(ローコストキャリア)を含め、海外勢の格安航空会社と戦っていかねばなりません。一方で日本のLCCはトラブル続き。特に成田線では空港を使用できる時間が限られる上、予備機を持たないため、機材不良などが生じるととたんに連鎖反応でキャンセル便が続出する傾向があります。

海外から日本に飛ぶ場合、燃料サーチャージの問題も大きく、成田を最終ディスティネーションにするより東京ストップオーバーのソウル行きにした方が安いこともあります。

JALは再上場させるのに問題はなく、それより、日本の航空業界をどう育て、政府の航空規制や成田空港の政府よりお堅い体質などの体質改善など全体的なブレーンストーミングを含めた大改造が必要だと思います。少なくともJALの上場を反対している小さな事象に捉われている場合ではないと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年7月19日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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