小沢一郎代表はハーメルンの笛吹き男か?

山口 巌

朝日新聞の伝える所では、小沢氏「全原発10年後に廃止」 新党の基本政策を発表との事である。

「国民の生活が第一」の小沢一郎代表は1日、党本部で記者会見し、党の基本政策を発表した。10年後をめどに全原発を廃止することや消費増税反対、地方に大幅な権限と財源を移すことが柱。今後、国民からテーマ別に政策を公募し、9月8日の会期末までに具体策をまとめる方針。

「原発全廃」、「消費増税廃止」、「地方分権」と言った重いテーマを何と国民から政策を公募し、たった一か月後の9月8日迄に党としての政策を纏めるのだそうだ。そんなにお手軽に扱って良いテーマなのか?

原発を廃止すれば化石燃料への依存を高めるしかない。これはイコール中東依存を高める事である。

今日も、BBCは悲惨なシリアの状況を、Syria conflict: Aleppo shootings by rebels condemnedと、そのトップページで伝えている。ヨルダンとの戦闘も残念だが、此処まで来れば激化は避けられないだろう。

一方、アラブの春と持て囃されたエジプトは結果、ムスリム同胞団が政権を取り、危惧された通り、先ずはキリスト教徒の弾圧が始まり、次いでイスラム原理主義でシーア派の国イランの支援を受けてであろうシーア派学校の開校の展開である。

残念であるが、政治の民主化と経済の近代化とは真逆の方向に進んでいる。これでは西欧諸国との溝が深まり、一方、サウジや石油資源に恵まれたスンニ派が支配する湾岸諸国との緊張が高まる事は確実である。

宗教、人種、民族の違いは、古来偏見の源泉であり、結果、差別や、場合に依っては「民族浄化」の如き虐殺が行われた事を歴史が語っている。どうも、中東はそちらの方向に動いている様に見受けられるのである。

こういう指摘をすると、大概は直接の議論を避け、「代替エネルギー」の開発で補うと言った、三流会社のFAQ的な回答が多いのも事実である。

サンシャイン計画は、何と1974年に発足している。母体となるNEDOは毎年2,000億円程度の予算を計上して来た。

それにも拘わらず、「代替エネルギー」等何一つ実用のレベルには達していないのではないか?

NEDOには、各R&D毎の「成果報告書」がきちんと保管されている。これを一読すれば、枝葉の部分は兎も角、何がボトルネックとなっているか一目瞭然の筈である。

一体、何割程度の国会議員がきちんと読んで理解しているのであろうか?勉強もせず、理解もせずに、妄言を撒き散らすと言うのは実に恥ずべき事である。

更には、「消費増税廃止」であるが、これを主張するのであれば、当然の事ながら代替財源を明確に示すべきである。債務問題解決に向け舵を切る事は最早国際公約であり、撤退は日本の信用の失墜に直結する。

言うまでも無い話であるが、日本には賢明な国民も居れば真逆の国民も数多く居る。露骨に言ってしまえば「馬鹿」で「考えず」、単純な「勧善懲悪」の話にカタルシスを得る人種である。

ハーメルンの笛吹き男の結末は下記の通りである。

笛の音でネズミの群れを惹き付けると、ヴェーザー川におびき寄せ、ネズミを残さず溺死させた。

仮に、小沢一郎代表が率いる「国民の生活が第一」が多くの支持者を獲得し、政策に大きな影響力を得る様であれば、「決められない政治」が継続し、鼠ならぬ優秀で賢明な日本国民の多くがチャンスを求め海外に逃避する展開を予想する。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役