平和な世界の作り方:政治と個人と友だちについて

松岡 祐紀

先週末、アメリカ人とアルゼンチン人たちと一緒に飲んだ。
ここアルゼンチンの政治は混迷を極めており、クリスティーナ大統領の支持率も急降下している。

そこでアメリカ人のマイクは「クリスティーナなんて、あやうくアメリカ副大統領になりかけたサラ・ペイリンに比べて全然マシだ」と言って、「たしかに」と一同納得した。

その話の流れでマイクが、自分の父親の友人に配管工がいて、その彼は大の共和党支持者で、そして猛烈にビル・クリントン元大統領を毛嫌いしていたという話をし始めた。

ニューヨーク在住の父親のその友人は、なぜかその大嫌いなビル・クリントン家から依頼があり、地下室にある配管を見ることになった。そして、その配管を見ていると当のビル・クリントンがお茶とお菓子を出してくれて、世間話などを色々と話をしたらしい。

小一時間ほど経った後、クリントン家を出たその彼はすっかり熱烈なビル・クリントン支持者になっており、民主党支持に宗旨替えしたとのことだ。


人の主義主張なんて、そんなものだと思う。たしかにビル・クリントンはカリスマ性に富む人物かもしれない。しかし、新聞やマスコミを通して知った当の人物に直接対面して、コミュケーションを取ると、たかだか小一時間もしないうちに、個人の幻想は脆くも崩れ去る。

隣の国の大統領や強権的な政府がちっぽけな島をめぐって、なんだか色々としでかしたおかげで、ずいぶんときな臭いことになっている。

また隣国では日本の文化や日本についてまともな知識がない人たちが、反日活動に熱心らしい。だがきっと彼らも実際に日本に来て、箱根の旅館あたりでゆっくりと寛いで温泉に浸かり、そして懐石料理なんぞをつまみながら、日本酒などを飲めばきっといっぺんに日本のことが好きになるだろう。

あの世界中を旅するナショナル・ジオグラフィックの写真家が日本の旅館を称して、「旅館は日本のパラダイスだ!」と狂喜乱舞したぐらいらしいから、外国に免疫のない人なんか、それこそイチコロだ。

一体、何を、誰に対して揉めているのだろう。国全体だろうか、愚策を繰り返す政治家なのか、あるいは国民全体か?

自分は典型的な日本人が嫌いという同じ文脈で、典型的な韓国人や中国人、それにアメリカ人、フランス人などが嫌いだ。その国特有の愚かな価値観から自由になれない人たちを嫌悪する。

世界は広い。
そのことに対して、いつまでも盲目である人たち全員を嫌悪している。自分が実際に見たものや、経験したことしか信じないことにしている。そして、どんな国でも素晴らしい人々がいることも自分の経験を通して知っている。

そのような人たちとずっと繋がっていたい。

「サルコジが再選したら、私彼を殺すわ!」と大統領選挙前に言い放ったフランス人や、「ブッシュ元大統領が再選したのは悪夢だった。しかもインチキによって」と冷静に言うアメリカ人と友だちでいたい。(サルコジが再選せずに、そして彼女が殺人犯にならずに安堵している)

自分たち個人は、政治と切り離したところで世界の人々と繋がるべきであり、国籍や肌の色なんかよりも、その人個人がどのような人かということを見極めて付き合っていく必要がある。

中国人、韓国人、アメリカ人と十把一からげで彼らを判断して、過激な行動を取っても世界から冷たい目で見られるだけだ。それに残念な話し、極東にあるちっぽけ島について、世界の人はとことん無知である。それよりももっと大事なことが世界でたくさん起こっているからだ。

今度、韓国人の友人に会ったら「きみのところの大統領って、ほんとどうしようもないね」と言ってからかい、そしてきっと「日本の首相のほうがもっとひどくない?毎年コロコロ変わってばかりで!」と言い返されるだろう。

そして、少しづつ自分の周りから偏見や先入観のない平和な世界を作っていきたい。

株式会社ワンズワード 松岡 祐紀
ブエノスアイレス在住
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