日本の若者に「職」を!

山口 巌

今朝のBBCは世界に蔓延する若者の失業を伝えている。ILOの説明では、全世界で7,500万人の若者が失業中との事である。

The effects of the euro crisis will spill over from developed to emerging economies, the ILO says, pushing youth unemployment to almost 13% by 2017.The ILO warned that many young people have given up hope of ever finding a job.

欧州債務危機の影響は先進国から新興産業国に転移している。 ILOが伝える所では2017迄に若年層の失業率は13%に達し、多くの若者が最早職探しを諦めてしまった事を警告している


若者の失業が直ちに日本の財政や経済力に大きなインパクトを与えるとは思えない。しかしながら、放置すればやがてボクシングのボディブローの様に効いて来て、日本を衰弱させてしまうと思う。

第一に、若者が職を得ると言う事は微々たるものであったとしてもGDPに貢献する事である。失業であれば当然の事ながら貢献はゼロである。

第二は、大学を卒業して失業者になると言う事は、無収入で「納税」や「社会保障の負担」と言った、社会人としての義務、責任を全うしない事を意味する。更には、生活保護の受給となれば社会保障の負荷以外の何物でもない。本来、社会に貢献すべき若者が社会のお荷物となっていてはどうしようもない。

第三は、社会が沈滞化する事である。街を歩けば、仕事のない若者が至る所で一日中道に座り込んでいる光景を目にする事になる訳であるが、これは矢張り良くない事である。若者の鬱積した不満や怒りはやがて臨界点を超え、何処かの時点で爆発する。日本社会は社会不安という爆弾を抱え込む事になる。

最後は、若者が不幸になると言う不都合な事実である。若者が社会人として成長する為には、「ノマド」であれ、何であれ、自ら起業、独立出来る様なパワーを持ち合わせた一部例外を除けば、既存の役所なり企業に職を得るのが唯一の可能性である。

コピーであれ、資料の整理であれ、上司から仕事を命ぜられその達成を目指す。当然、自分の頭で考え、上司とコミュニケーションを取らねば達成は不可能である。こう言う事の繰り返しでしか社会人は育たないと考えるのである。

さて、それではどうやって若者に「職」を与えるかである。

判り易いのは、明らかにシステムとして瑕疵のある現行制度にメスを入れ、若者が間違った道に迷い込むのを遮断する事である。

第一の例として、法科大学院の廃止を提案したい。2011年度新司法試験 法科大学院別 合格者数・合格率ランキングを観る限り、一部の例外を除き、殆どの法科大学院が機能不全である。

こんな所に入学した若者の大多数は、30才手前の社会人として潰しの利かなくなった年齢で司法試験を諦め、社会に放り出される事になる。フリーターとして職を見つけるのが精一杯と思う。人生を棒に振った訳である。

以前の司法試験制度で何ら問題は無かった訳であるから元に戻せば良いだけの話である。教職員は失業を心配して大反対するであろうが、若者をこんな出鱈目な所に送り込む事は一日も早く中止すべきである。

今一つは多過ぎる大学院の廃止を提案したい。この政府統計資料をベースとした、このブログが実に興味深い。

修了生全体では3人に1人が無業者,10人に1人が死亡・進路不明者です。しかるに,最も悲惨な専攻では,3人に2人が無業者,3人に1人が死亡・進路不明者であることが分かります。

何故こう言う悲惨な事になるかと言えば、大学院博士課程修了者の需要と供給が、全く以てマッチしていないからである。

納税者の一人として言わせて貰えば、法科大学院であれ、大学院博士課程であれ「税」が投入されている。前途ある若者の人生を誤らす様な所に「税」を使うとは何事か?と言うのが率直な印象である。

こう言った、欠陥のある制度を見直すと共に若者の雇用を増やす事が重要である。

以前から推奨しているユニクロのシステム、詰まりは大学一年生で「内定」を出し、卒業迄実際の店舗でアルバイトとして働き、卒業後正社員に昇格すると言うのは良いシステムと思う。

学生に早くからチャンスを与え、「鉄は熱いうちに打て」で徹底的に鍛えるのである。若い内から鍛えねば、世界に伍する事の可能な人材は育たない。

政府はユニクロの様なシステムを採用する企業に対し、アルバイトから正社員への一定以上の転換率を条件に税制面で優遇措置を取るなどして産業界での浸透を促進させるべきと思う。

政府は「高齢者重視」から「若者重視」に、企業は「中高年甘やかし」から「若者の育成」に舵を切るべきである。

山口 巌 ファーイーストコンサルティングファーム代表取締役