ポケモン、戦隊もの、ガンダム、そしてメタルバンドから学ぶ 幸せなマネタイズ、気持ち悪いマネタイズ

2012年09月30日 18:29

「で、それで儲かるの?」

ウェブサービスにしろ、コンテンツにしろ、マネタイズをどうするかという話になる。ここ数カ月で一気にネットの有料コンテンツが立ち上がった。成否については私も日々、激しく傍観しているが、常に先行き不透明感がある。ここで、いくつかの事例をもとに気持ちいいマネタイズについて、徒然なるままに書くことにする。


まずは、男のお子さんがいる知人女性のボヤキを紹介したい(本人了解のもと、匿名で紹介する)。

TVのポケモンアニメは無料→DS機器とポケモンソフトを購入→ポケモン映画来場者しか受け取れない強力ポケモンがある→しかも映画は同時2作品公開でそれぞれ別キャラ&別料金・・・親としては怒りを感じます。

なるほど。いわゆる、キャラクターマーチャンダイジングだ。これらは、特に無料放送の場合はそれ自体が実は「初回無料」の世界、広義の「フリーミアム」の世界になっている。

これが顕著なのが、ヒーローもの、特に戦隊ものだ(正式にはスーパー戦隊シリーズという)。これは有名な話ではあるが・・・。戦隊ものは、四半期の変わり目などではなく、なぜか2月に始まる。この時期に始めるともっとも売上が上がるからだ。ちょうど4月をまたぐので、入学関連でのプレゼントニーズを拾えるから。年度が変わることによって番組を卒業することも防ぐことができる。4月、5月ごろには敵が強くなってきていて、新しい武器を投入することができ、これがGW商戦で大活躍する。だんだん、最初のロボットでは勝てなくなり、7月くらいにはより強い2号ロボと、ゴールドやシルバーといった新しい仲間が登場し、これが夏休み商戦で大暴れする。秋になると、敵がさらに凶悪になり、10月、11月くらいには最強のロボが登場し、12体くらいで合体。クリスマスやお年玉の時期に大暴れ。お父さんたちのボーナスを奪っていく。そして、1月末には必ず世界に平和が訪れる。さらに言うならば、かぶらないネタの新しい戦隊が登場する。そう、業界用語で3-6歳(サブロク歳と読む)という言葉があるのだが、これらの番組は3歳前後で見始めて、6歳くらいで卒業する。いや、最近は5歳くらいでまさにポケモンに移行すると言われているのだが。その間、動物もの、乗り物もの、宇宙・ファンタジーものなど、かぶらない戦隊が登場し、子どもたちには「○○ジャーと○○ジャーは違う」という反論の余地を持たせ、お父さんの財布を奪っていく・・・。

なお、戦隊ものについては、5人対1人で悪を倒すというのがどう考えても卑怯じゃないか、最初から最強の武器を投入しろ、話し合いで解決しろ、悪も悪で子どもを襲うよりも首相を襲えと幼い頃から私は思っていたのだが、これは安全保障体制とは何か、経済制裁とは何か、戦争は威嚇から始まるということを子どもたちに教えたかったのではないかと、今では解釈している(あくまで私見である)。

ただ、この、ついついお金を払ってしまう、「ストーリー」で消費してしまうという流れは、マネタイズを考える上で参考になるものであると思う。流れの中で払ってしまう・・・。数年前に一橋大学の楠木建教授の『ストーリーとしての競争戦略』がベストセラーとなったが、まさに「ストーリー」が大事なのだ。単に、「ここは無料」「ここから有料」とするのではなく、その年で、いや長いスパンで、どうやってお金を頂いていくか、この設計はヒントになるのではないだろうか。

もっとも、ここも気をつけないと、「あざとい」「せこい」と感じられていまう。前出の、ポケモンのお金の取り方に疑問を抱く親の意見のように、反感を買うだけだろう。それこそ、最近の仮面ライダーなどは、ベルト+変身につかうカード、USBメモリ、メダル、スイッチ、指輪などが凄い点数、出てくるので親たちからは「鬼畜すぎる!」という声をよく聞く。それでも買ってあげざるを得ないというのは強い商品だということなのだけど。

さらに、ビジネスのために明らかにストーリーがねじ曲げられている作品もいくつかあり、これも考えものだろう。そこで言うと、最初の『機動戦士ガンダム』は奇跡の作品だ。もちろん、ガイドブックなどを読むとスポンサー筋の影響で途中、変更になった点などはあるようだが、それでも、番組の面白さとのバランスがとれていたように思う。もっとも、当初は人気がなく、途中で打ち切りになったわけだけど。拙著『僕たちはガンダムのジムである』でも触れたが、大人の世界の縮図を描いたことが勝因だったと私は見ている。その「ガンダム」も後の作品は商業色が強すぎるという批判もよく聞くわけだが。

ここでも、気持ちよい、ストーリーとしての消費のデザインが必要だと言えるだろう。もっとも、ビジネスの世界なので、売れることは必達目標なのだが。

もう1つ。音楽業界でのマネタイズの話をしよう。

各種ツールの組み合わせで、マネタイズの流れが変わっている。

先日、日本の老舗ヘビーメタルバンド、LOUDNESSのライブを観た。会場となった新宿BLAZEは超満員。バンドの演奏はより残虐性と叙情性を増しており、楽曲もますますハードでヘヴィ。老若男女のファンが集まり熱狂した。

実は、このライブ、ニコ生で無料配信され、実に3万7000人をこえるファンを動員したのである。

LOUDNESSは、30年以上のキャリアを持ち、数々の偉業をなしとげたバンドである。
ただ、申し訳ないが、バカ売れしているわけではない。そのバンドが37,000人以上の観客をニコ生で集めた。まあ、ニコ生で企画をやるとこれくらい集まることはよくあるわけだが、それでも日本武道館でのライブ3回分に匹敵する。

無料配信するのはなぜか?ずばり、新しいファンの獲得、以前ファンだった層の呼び戻し、そして、新譜を売るためだろう。この日のライブの本編では、ここ数年発表した曲しか演奏しなかった。ニコ生で放送されたのも、本編だけだという。そして、MCでも、新譜のことをアピールしていた。実際、放送後、新譜「2012」はAmazonで在庫切れになっていた。

無料→有料のバランスが絶妙だったと言える。おとしどころは、CDと、次回のライブチケットというベタなものだけど。

これは『未来型サバイバル音楽論』(津田 大介 牧村 憲一  中公新書ラクレ)で学んだことだが、単にCDの売上ではなく、ライブやグッズ、ファンクラブを上手く組み合わせてマネタイズしているし、ニコ生もうまく活用している。

半分はオタクトークになってしまったが、このようなアニメ、特撮、そしてメタルバンドのマネタイズ、特に無料→有料のバランス、ストーリー消費は、ウェブコンテンツなどでのマネタイズに大いに参考になるだろう。

もっとも、あざとさが全面に出たら、ユーザーはひいてしまうのだけど。一方で、電子書籍、有料メルマガ、有料放送などは今のところ、一部の勝ち組を除いて、期待するほどキャッシュ化できていないのだけど。

今後、どんなマネタイズの流れがあるのか?真摯に傍観することにする。

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常見 陽平
千葉商科大学国際教養学部専任講師

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