「分厚い中間層の復活」を掲げた直後に身内の非正規職員に労組結成された厚労省 --- 城 繁幸

アゴラ編集部

お笑いネタを一本。

都内ハローワークで休職者の相談に乗っている非正規雇用職員が労組を結成するとのこと。

ハローワーク 非正規職員労組発足へ

東京都内のハローワークで仕事を求める人たちの相談に応じたりしている非正規の職員が契約期間が1年以内に限られる、みずからの不安定な雇用の改善などを求め、22日、労働組合を結成することになりました。厚生労働省によりますと、ハローワークの非正規職員だけで作る労働組合は全国にほかにないということです。

くわえて、サービス残業常態化で通勤費まで制限付きというワタミも真っ青のブラックぶりだそうだ。

そりゃ最前線でコキ使われているのに、バックオフィスで座ってるだけの厚労省の役人が何倍もの時給で終身雇用(しかも65歳定年)だとバカバカしくてやってられないだろう。


それにしても、「分厚い中間層の復活」を強く打ち出した労働経済白書をリリースして「正社員にしない企業が悪い」と言いきった直後に身内の非正規雇用に労組を結成されるというのはネタ的にはハイレベルだ。厚労省は政策的には低レベルだが、笑いのツボはよく抑えている。

実は以前から官の現場の方が正規と非正規の格差問題は深刻だと言われていた。
民間に比べ、どうしても官はグレーな部分が少なくなる。でもグレー要素が消えたわけではなく、その分、非正規サイドに押し付けられていたためで、それらが濃縮されて上記のようなブラックになっていたわけだ。
組織全体として黒さを根絶するは不可能であり、あとは誰がどれだけそれを引き受けるかという公平性の問題だ。
例の65歳定年延長で役所は仕事や人件費をねん出しないといけないから、今後一層非正規側のブラック度が増すだろう。

まあそれはさておき、とりあえず「非正規雇用は悪、だから正社員化しますさせますやらせます」がモットーの厚生労働省としては、ぜひとも隗より始めよで自分のところでやってみて欲しい。

ハロワの希望者全員を正規職員にし、定年までのポストと各種社会保障費を負担する。
もちろん人件費は大幅に増加するから(政権が国家公務員人件費2割削減を掲げる中)予算をいっぱい増やさないといけない。
青天井で公務員さんの人件費は我々納税者がいくらでも負担しますよ」という心優しいさいたま市民のような方々は例外で、多くの国民は猛反発するはずだ。
そりゃそうだろう。「法律で規制強化されたから」という理由で価格転嫁できるような業種はインフラ系くらいのものだ。

というわけで、まず厚労省は国民を相手とする階級闘争を開始すべきだろう。
「国民は公務員への搾取を止めよ!悪の国民から増税を勝ち取ろう!」
共産党や社民党も有権者にケンカを売るわけにはいかないので、孤独な戦いになるだろう。
ま、頑張ってくださいね。

あ、以前に厚労省指定天下り機関の労働政策研究・研修機構さまが終身雇用バンザイしつつ「団塊ジュニア以上はもういらないからどっか行け」って公言した時みたいに、嵐が過ぎるまでだんまり決め込んで「うちはうち、民間は民間」って知らんぷりするのは無しですよ。

もちろん「論文一本作るのに6000万円かかりました」とかインチキするのも無しで、あくまで払うべき所に払うべき分だけ払いつつ、正社員化を推進してくださいね。

少なくとも僕はしばらくウォッチし続けますんで。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2012年9月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。