ルネサス救済と日本型協業システム --- 岡本 裕明

アゴラ編集部

NEC、日立、三菱電機が母体となる半導体では国内最大手のルネサスエレクトロニクスが経営不振に陥っており、先ごろ、アメリカの投資ファンド、コールバーグクラビスロバーツ(KKR)が1000億円を出資して救済に乗り出すと発表、その交渉は最終段階を迎えていました。

そこに政府系ファンドの産業革新機構を中心にトヨタ、日産、ホンダ、パナソニック、キャノンなどが出資してアメリカ投資ファンドに対抗する姿勢を表明しました。


ルネサスはマイコンを自動車会社などに圧倒的シェアで供給し、ある意味、市場独占をしている部分もありました。そして、そのマイコン市場を「コントロール」できなければ日本の自動車業界は足元を揺さぶれらるという弱みもありました。仮にKKRが買収した場合、同社の事業基盤などを考え合わせれば日本の自動車産業の自由が利かなくなるという恐れは大いにあり、これは大変だ、という事になったのです。

考えれみれば震災やタイの洪水の際、日本は部品供給という点で苦しめられました。これはルネサスを国内主導でどうにかしたいという気持ちにさせた最大の理由でしょう。更にパソコンドラムのエルピーダメモリが経営綻破し、アメリカの会社の傘下になったということがもう一つの理由。最後に、シャープが鴻海と出資交渉をしている中で外国企業との交渉はなかなか思ったような「阿吽の呼吸」で進められない、ということを認識したのではないかと思います。

では、日本の主要企業によるルネサスの買収は客観的に見て正しいのでしょうか?

私はシャープの鴻海による出資のニュースの際、国内勢でどうにか対抗策を練ったらどうか、ということを書かせていただいていたと思います。それを書いた趣旨は技術流出と知的財産の安売りに大いに疑問があったからです。
よって、今回の大手企業によるルネサスの買収提案は基本的には同意できます。が、何故、ここまで問題が大きくなり、アメリカの投資ファンドが動き出し、その最終取りまとめの段階までこのような動きが出来なかったのか、という点が極めて遺憾に思っているところです。

日本企業は往々にして問題が発生し、それが大きくなり、火消しに躍起になってようやく「火事場の馬鹿力」を発揮するという傾向が非常に強いのです。今回もいわゆる「プリベンティブ」(予防措置的)な対応がもっと以前からあればこういう問題にはならなかったはずです。

日系企業にとり、その協力企業がそこまで大事であるのなら日本的な協力企業体制を再度構築するというのは考え方によっては正しいのかもしれません。私は長らく建設業界におりましたのでその下請けの重層構造と協力業者との運命共同体的企業運営は長く経験してきました。

このピラミッド型協力企業体制は日産のゴーン社長がぶち壊しをした代表例でありますが、もしも日本がそれ以降、過度の欧米型スタイルになりすぎて国内の深く根付く企業慣習と合わないのであればこれは一考の価値があるのかもしれません。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。