デフレからの脱却は日本政府、日銀などを筆頭に政界、財界全てからの強い希望となっています。そして、消費税上げに関してもデフレからの脱却を一つのメジャメントにしたいとするなど日本の政策指針そのものに深く影響する極めて重要な課題であるといえます。
しかしながら日本のデフレは実質的に1995年ごろからスタートしており、いまだ脱却の決め手となる状況になっていません。つまり、17年も脱却できない話なのにデフレからの脱却を条件とした話をすること事態が奇妙といえば奇妙でありますが、このアリ地獄のようなデフレからは本当に脱出できるのでしょうか? 今日はこのあたりを考えてみたいと思います。
デフレの定義は一般物価水準の継続的下落(OECD)となっており、2年ぐらいをその判断基準としているようです。物価が何故下がるのかといえば教科書的には総需要が総供給に満たないからということです。つまり、作っても売れない、だから値下げすると考えたらよいでしょうか? 但し、総需要を個数で捉えるのか、金額で捉えるのかによってこの扱いも変わってくるでしょう。
例えば総需要を販売個数でみた場合、販売が十分でない理由は少子高齢化が最大の理由となります。もう一つは日本が一億総中流を経験し、成熟国家として国民全般において偏差のブレが小さい豊かさを誇っていることが上げられましょう。これは何を意味するかというと耐久消費財などに対する需要が小さくなるのです。
更に不幸なことに日本の場合バブルとその崩壊を経験したため、生活向上のきっかけがつかめなくなった状態にあるといえましょう。私はこの複合理由が販売数で見る総需要の低迷だと考えています。
一方販売金額で見るならばこれは言うまでもなく技術革新とグローバリゼーションであります。テレビやパソコンの価格の下落振りを見れば如何に物価が下落したかお分かりになると思います。
ちなみに消費者物価指数はコアで見る場合が多いのですが、これには価格がブレやすい生鮮品やガソリンなどは除外されています。よって一般の人がスーパーで食材が値上がりしているのに何故物価が下がるのか、という疑問はこのあたりに隠れているかもしれません。誠に分かりにくい話ですが、物価の計算はその時々の生活に必要なアイテムを事細かに計測して計算しています。ですからテレビやパソコンなどは一度買えば数年から場合によれば7、8年も買わないかもしれませんが物価計算にはしっかり組み込まれているのです。
よって消費者の実感的な物価水準は別にして計算上はじき出される物価は論理的に考えれば日本は上昇する余地は少ないのではないかと見ています。ですから政治家や役人がどれだけ素晴らしい知恵を出しても根本的な発想転換をしない限り数値の上でのデフレは止まらないはずです。
では仮定の話ですがデフレから脱却するにはどうしたらよいかといえば上記の原因の逆を行けばよいわけで移民を増やし、富裕層をもっと肥やし、バブルを作り出せばよいということであります。また、値下げする技術革新ではなく付加価値をつけ価格を上げる工夫をすることも必要でしょう。
例えば最近話題の4kテレビとか携帯電話の高速通信規格であるLTE等の普及は結果としてデフレを進めることになるはずです。実に不思議なのですが、過去の流れからすれば新技術、新製品の投入によりそれまでの製品が陳腐化し、大幅な値下げを誘い、且、市場競争により新製品の価格も下がるわけで価格は常に下がるサイクルにあるはずだと私は思っています。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年9月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。