オープンデータは社会を変えるか? --- 中村 伊知哉

2012年12月28日 13:25

オープンデータ。政府・自治体はじめパブリックなデータを公開し、民間が活用し、情報サービスを生んでいく運動。オープンデータ流通推進コンソーシアム主催のイベントが2012年12月10日、東大にて開催されました。ぼくはこのコンソーシアムの理事として参加しました。

情報公開に対し霞ヶ関は前のめりです。総務省の阪本泰男政策統括官(元ぼくの上司、えらい)は「産官学連携で国際協調も進める」決意を示し、内閣官房の奈良俊哉IT担当参事官(えらい)は「政府自ら二次利用可能な形式で公開していく」ことを明言しました。内閣、総務、文科、厚労、農水、経産、国交、財務といった仲の悪そうな省庁が一つのテーブルについて公開策を練り始めているそうです。経産省の岡田武情報プロジェクト室長(えらい)はソウケイセンの終了を示唆しました。早慶戦じゃなくて総務/経産戦争です。ソレお願いします。元 郵政/通産戦争の前線で消耗した身としまして。


シンポの冒頭では、学会大御所3名からのプレゼンがありました。東大前総長の小宮山宏さん、慶應大の村井純さん、東大の坂村健さん。

小宮山さんは「ソウケイセンやめろ、民間も言い訳やめて取り組め」と檄を飛ばす。ぼくはデジタル教科書・教材協議会の会長ー事務局長の関係なので、小宮山先生の怖さは身にしみており、このオヤジが本気なら動くかもという気がしております。

村井さんは「3/11以後、震災や原発の情報を共有することを通じ、国民のオープンデータへの需要が顕在化した」と語る。「ユーザ一人一人が情報を発信してコンテンツを作るウェザーニュース型、政府がデータを一括して出す気象庁型、双方がある。」そうですね、データをオープンにするだけでなく、それをソーシャルメディアで活用して、大きな恩恵を得ることが重要です。

坂村さんもそのポイントを突きます。「オープンにするだけじゃだめだ。東電が3/11以降に出したデータはGIFやFLASH。これでは使えない。”でんき予報”は個人やYahoo!がAPIを組み合わせてできたもの。CSVとAPIが必要だ。データを使える形で公開して、一般市民・プログラマがサイトを作っていくことが必要だ。」公共にはきちんと出してもらう。民間はきちんと使い込む。ということですね。

さらに坂村さんは社会政策にも踏み込みます。「日本は”これならやっていい”というポジティブリストが主流。でもオープンデータは英米法的なネガティブリスト式、”これはやっちゃいかん”でないと、イノベーションに対応できない。」はい。日本のネットの広がりは、先輩たちが「やっちゃいかん」ことなのに突き進んだからという歴史、知ってます。

「ネットを使えない人がいる。だからネットを採用しない。などという社会の態度のせいで革新が止まる。フィンランドはブロードバンドへのアクセスを国民の権利として保障している。日本も社会権にすべき。全ての社会活動を “全員ネット”前提で考えよう。」そのとおり。ネット選挙しかり、デジタル教科書しかり、一部を気にして全体が進んでいない。変えましょう。

さて、ぼくは利活用・普及委員長でもありまして、活動をご報告申し上げました。多くの省庁のかたがた、自治体のリーダー、企業や研究機関のみなさんにご参加いただき、情報発信や事例開発を進めています。委員会はオープンで、毎度Ust中継しています。オープンデータが注目され始めたとはいえ、まだまだ専門家の話であり、重要な課題であることを国民全体に認識してもらうには、かなりの普及活動が必要です。まず事例や成果を挙げて、積み重ねて、みんなで共有すること。アイディアソン、ハッカソンを開催したり、オープンデータ事例を勝手表彰したり、できること、どんどんやります。

村井さんが「みんなで作るといっても、クラウドソースはいかん、デザインを5万円とかで募集するとすばらしい作品が集まってきたりするんだが、これやるとデザイナーが死ぬんだよね」と言ってました。すみません。コンソーシアムのロゴはコレで作っちゃいました。箱からポンとオープン。費用、きっちり、5万円。できること、どんどんやります。
 ぼくらの役割は、コンソーシアム主導で普及活動を進めるというより、自治体、企業、個人で汗を流している活動に光を当て、支援し、つなぎ合わせ、後に続く自治体、企業、個人を増やしていくことです。ご指導ください。

パネルディスカッションの席でぼくが話したのは2点。

  1. サステナブルな推進のためには、ビジネスモデルを開発することがポイント。ぼくが関わっているデジタル教科書やデジタルサイネージでも、オープンなデータは教材にもなるしサイネージコンテンツにもなる。だが、いま想像・想定できない利用法やビジネスが広がるという点が大事。この1-2年でメディア環境は大きく変化した。スマホなどのマルチスクリーン、クラウドネットワーク、ソーシャルサービスが普及し、膨大な情報が生産され、共有されることが認識されている。オープンデータはその次の次元。これまでのコミュニケーションはP2P、人と人、1億人×1億人だったが、これからは、ぼくの周りの全てのモノ、100個ぐらいのモノがみな情報を発信する、M2M、モノとモノ、だから100億×100億、情報量としてはン万倍になる。新しい産業が生まれる。間違いない。
  2. コンソーシアムがすべきことは3点。+を伸ばすこと。まずはビジネスモデルを作ること。情報提供・共有のインセンティブは、今は善意に頼っている。企業として収益を上げられる道筋を作る。次に、マイナスを減らすこと。それは安心感を醸成すること。デジタル化に対する不安や抵抗が必ず出てくる。プライバシー保護などの運用をちゃんとしてるよ、という情報を発信する。3点目は、産学官のタッグを組み続けること。そこで政府に期待するのは、最大のデータ保持者としてデータを出せ!だけでなく、カネも出せ!ということ。民間が立ち上がるまでの間、資金の出し手としてプレイしてくれることを期待する。

政権が変わるギリギリのタイミングでしたが、政府高官にも多数会場にお越し頂いていましたんで、そこんとこ一つよろしくお願いする次第です。

ところで、データガバナンス委員会の井上由里子主査:一橋大学教授が、「政府保有データの著作権をフリーにして使わせるべきだ」と提案されました。これ、とても重要な課題です、というか、そもそもオープンデータの入口論だと思います。これは早急に実現すべく動きたい。法律の問題なのか、行政運用の問題なのか、政策論的には整理を要しますが、トットトやっつけるべき案件として、具体的に動きたいと思います。政府はじめ関係者のみなさま、攻め上りますので、よろしく。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2012年12月24日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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