2012年を振りかえって日本にもっとも大きな影響を与えたのは尖閣問題に端を発する日中間の経済問題でしょうか? この1、2ヶ月は中国に進出している日本企業もやや明るさを取り戻しつつあるという報道から最悪期は脱出したと考えておりますが、これを契機に日本企業はそれまでの中国一辺倒からプラスワンと称する代替案を推進する傾向がより一層強くなってきています。
事実、日経ビジネスを読み続けていて今年後半は編集者のトーンが明らかに東南アジアに目を向けようとしています。次々とアジア諸国での日本企業の活躍ぶりを紹介し、視線を変えようとしている意図が良く見て取れます。そして私の手元にある最新号では遂に「東京から本社が消える」と題うち、サブタイトルでアジアや地方へ一極集中の終焉と謳っています。
たとえば日本企業のタイやインドネシアでの活躍は圧倒しており、今後、その勢いを周辺国に伸ばそうという状況にあります。東南アジアでの日本車の販売シェアは8割にも到達しそうで中国でのそれが2割であることを考えれば人口比では東南アジア諸国連合が6億人ですからその8割のシェアは中国の13億人に対する2割のシェアのおおよそ倍あると計算できるのです。
今年のトヨタの世界販売台数は再び世界一を確保する見通しとなっていますが、その内訳からは中国の未達分を東南アジアやアメリカで補ったという形になっています。また、タイなどへ日本企業が進出する理由のもうひとつの理由に同国がオーストラリアなどとEPAがあるために日本からオーストラリアに輸出するよりタイから出荷した方がメリットがあるためです。また、地政学的にもオーストラリアのみならず、インドが近く、金融の中心であるシンガポールに近いことは大きなアドバンテージであると考えられます。
これらを総合的に勘案しますと確かに日経ビジネスが特集を組む「東京から本社が消える」という題目に対して長期的にはその傾向は見て取れます。ちなみに同誌によると過去10年で東京を去った本社は9000社に迫り、今年5月に完成した東京駅駅前のJPタワーの入居率はいまだ6割しかないというのはその傾向を表しているのかも知れません。
もっとも私はだから東京の不動産が危ないとはまったく思っていません。これからしばらくは新規供給が少なくなりますので需給関係は引き締まる方向ですし、オフィスの空室率も改善の方向にあります。安倍政権が国土強靭化や金融緩和を推し進めることで内需の振興も期待できるわけですから東京の空洞化が直ちに進むわけではありません。
ただ、2013年は間違えなく東南アジアの時代になり、世界で最も高い経済成長を見せるエリアですから世界中から投資マネーが入り込み、経済はブームとなる可能性はあります。その際に輸出主導型の企業は法人税、地域性、ロジスティックス、人材の多様化を含め部門ごとに日本を去る傾向は今後も続くでしょう。
むしろこれが日本のホワイトカラーの大量失業に繋がる可能性の方が怖いかも知れません。
では東京が生き残る方法はあるのでしょうか? 東京がもともとここまで発展したのは代表的日本企業の本社が集中していたこと、そしてそれを支えたのは金融や内需中心であったわけです。外資や新興企業が好んだのは歴史的に浅い六本木周辺でした。よって伝統的日本企業に活力を持たせ、なおかつ、デフレからの脱却は企業マインドが大きく変化すると見ています。
また、地政学的にアメリカを含む北米とは一番近いアジアですからその位置づけを考えれば北米企業の本社機能の誘致などを本来は進めなくてはいけませんでした。それには税制や人材、高すぎる不動産価格がある程度調整されることで競争に打ち勝つことが出来るのではないかと思います。
東南アジアブームに沸く以上に日本国内側はこれ以上の流出が起きないよう、総合的な対策は早急に取るべきでしょう。
今日はこのぐらいにしましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2012年12月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。