実態を伴わない円安の弊害がそろそろ出てくるのではないか --- 岡本 裕明

2013年02月12日 05:00

円安論者、藤巻健史氏が日経電子版に「私はすでに円高局面は終わっており、中長期トレンドとして大幅円安の時代に入ったと思っている」と述べています。氏は著書などをみても一貫して円安論者、その理由は日本の経済力が円高を維持できないという発想に原点があると思われます。


今回の記事でも「20年間にわたり国内総生産(GDP)が全く伸びなかった国なのに、国力の通信簿であるはずの通貨が強いままであり続けるとは考えにくい」としていますがGDPが伸びないのは成熟先進国では当然の帰着ポイントであってこれを理由に円安になるというのはかなり乱暴な論点だと思います。

一部には藤巻氏のポジショントークではないかという意見もありますが、私はこの方の円安への信念ではないかと察します。

更に株価の話にも及び、アメリカは史上最高値を狙う位置にあるのに日本はようやく底値から脱出した程度の弱さという趣旨のようです。これはアメリカが金融緩和で通貨流通量は何倍にもなり、行き先のないお金が株式市場に回ることを考慮しなくてはいけません。アメリカの場合、配当がよい上に四半期ごとにくれるところも多く、値上がり期待というより代替預金先という発想の方が強いと思います。もともとアメリカ人と日本人では預貯金の運用先の嗜好性がまったく違います。よって、株価で国の実力を述べるのもどうかと思います。

では、円安はどこまで行くのか、といえば私はそろそろ潮時だと思っています。もしかしたら勢いで100円ということもあるのかもしれませんが、一時的だと思っています。円の実力は日銀の金融政策次第ですが、今の水準では心地よいところだと思っています。それに世界の中で円の一人負けは海外の中銀や財務当局が許さないはずで、一方通行ということは起こりにくいのが今の世の中です。

企業の第3四半期決算を見る限り、業績の回復具合は思ったよりよい、という印象です。特に10月~12月というのは中国との問題もあり、日本全体がナーバスになっていた時であったため、それを考えれば上出来であるという印象です。為替がそれから更に15%ぐらいはよくなっているわけですから通期の決算は更に上方修正すら可能であるように見えます。

次に日銀が利付を止める、止めないという議論があります。私はいつか、近いうちにやるのではないかと思っています。仮にそうであるならば金融機関はそのお金の行き先を国債にする可能性は高く、日本の国債は引き続き高い需要が想定されます。日本の国債が国内でほとんど消化されている傾向について今後、長期的には減少するだろうとは思いますが、一気に下がるものではなく、また、海外諸国との天秤ですから、日本が欧米先進国に比べて比較にならないほどファンダメンタルズが悪く、売り込まれるという想定はパッとは浮かばないのであります。

為替は基本的に通貨量がモノをいいます。金融緩和を一生懸命進めている日本はそれでも先行した欧米にはキャッチアップできないのであります。では今の円安はなぜ起きたかといえば、安倍首相の日銀に対するプレッシャーと大幅な金融緩和への期待感先行であります。アメリカがQE3の噂で翻弄された時に似ているわけです。

購買力平価からしても円が安くなるとは思いにくいですし、それ以上にこれ以上円安になれば資源などの大幅値上がりで各方面から悲鳴が上がってくるはずです。一部の人には円安は嬉しいのですが、ほとんどの消費者には過度の円安はウェルカムではないということを身をもって知る日がそう遠い日でないうちにやってくると思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年2月8日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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