アベノミクスという偽薬

2013年03月06日 16:04

きのうは片山さつき氏の政治資金パーティで、ロバート・フェルドマン氏と議論した。会場に来ているのは片山氏の後援会のメンバーが中心なので、当然アベノミクス賛成派。フェルドマン氏も「超強気」というアウェーの闘いを強いられて緊張したが、意外に意見は一致した。


フェルドマン氏も量的緩和でインフレになるとは考えていなくて、大事なのは「期待」だという。株価が上がっているのも日銀の金融政策のおかげではなく、安倍首相の「プロ・ビジネス」の姿勢による期待だ。円相場も同じで、EUが「通貨安競争」を批判するのはお門違いだ。今の円安相場は本来の水準に戻っているだけで、1ドル=100円ぐらいまでは行くだろう。大事なのは、このチャンスに社会保障などの改革をやることだ。

私も同じ意見で、インフレになることは景気回復の必要条件でも十分条件でもない。本質的な問題は、古い産業構造が温存されているために大きな雇用のミスマッチが残っていることで、これを解決しないで物価だけ上がっても意味がない。

アベノミクスはインフレを起こすことのできない偽薬だが、偽薬にも効果があるので、副作用がなければいくら出してもかまわない。だから究極の問題は、現在の財政状況をどう見るかだが、長期金利は0.6%割れという10年ぶりの低水準だ。

これはマーケットが財政に危惧を抱いていないと同時に、インフレも予想していないことを示している。ブレークイーブン・インフレ率は1.3%程度だが、これは消費税率の引き上げを織り込み始めていると考えられる。5%の税率アップで消費者物価は3%ぐらい上がるので、まだ半分も織り込んでいない。実際に上げるのかどうか不確実だったが、景気の好転で確実に上がることが見込まれるようになったのだろう。

岩田規久男氏のいう「準備預金70兆円」という程度は日銀がすでにスケジュールに組み込んでいるので、黒田・岩田体制になっても日銀が予想外の「大胆な緩和」をすることは考えられない。だから偽薬がきくのは、首相に求心力がある今のうちだ。安倍内閣の支持率は75%で上昇中という近来まれに見るいい条件なので、偽薬のききめがなくなる前にTPPや雇用規制の緩和などの「苦い薬」を飲ませる改革をしてほしい――というのが私の結論だった。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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