WBCよりクール!Jリーグの“大東亜共栄圏”戦略

2013年03月09日 07:00

日本全国津々浦々の野球ファン、スポーツファンの皆様。
昨晩はお疲れ様でした(汗、笑)。WBC台湾戦のゲームセット直後にこれを書いていますが、ネット上も異様に盛り上がりました=下記図=。各局別のつぶやきでテレ朝が振り切っている。こんな現象は初めて観たなぁ。ツイッターWBC


日本は決勝ラウンドまであと一歩としたが、キューバと思った相手がまさかオランダとはね。宿命のライバル韓国が1次ラウンドでまさかの敗退。日本も初戦でブラジル、昨日は台湾に苦戦し、海の向こうではイタリアがメキシコを破る番狂わせ。各国代表のレベルが上がり、WBCは競技の国際普及という大会の名目に実態が近付いてきた感がある。

●ハゲタカのWBCと違うJリーグ
忘れてならないのは、WBCはあくまで米大リーグ(MLB)の世界戦略の一環に過ぎない現実だ。前回大会、米側の大会収益が66%だったのに対し、日本は連覇を遂げ、スポンサー面での貢献も高いにもかかわらず13%。昨年、日本のプロ野球選手会が一時不参加を表明したが、日本代表のスポンサー権などをMLB側が全部パクってから利益配分する仕組みに抗議してのことだった。サッカーに置き換えると、日本代表のキリンのスポンサー権をFIFAがパクってるに等しい。MLBのハゲタカとしてのボッタクリ本領発揮だ。

欧州サッカーも同様。日本をはじめアジアマネーを吸い上げて自分たちのリーグ繁栄しか眼中にない。英プレミアリーグの海外向け放映権料約620億円のうち、6割はアジアマネー(12年12月11日・日経、リンク先は有料)。ところが近年、日本のスポーツ界で、MLBや欧州サッカーと相当違う価値観の国際戦略を進める組織が出現した。今年で20周年を迎えるJリーグだ。

●日本サッカーの「弱み」を「強み」に
先日、フォトクリエイト社が主催する、Jリーグメディアプロモーションの山下修作・アジア戦略室長のセミナーに出席し、その取り組みを拝聴した。

120億円VS2,500億円――。前者はJリーグ、後者は英プレミアの収入だ。
欧州5番手の仏リーグ・アンの約1,000億円と比べても見劣りするが、Jリーグは実はアジアでは断トツのナンバーワンなのだ。アジア2位で、「オイルマネーの金満リーグ」の印象があるカタール(48億円)の倍以上。プロサッカーのなかった少年期、マイナー競技だった時代を覚えている身としては、Jの20年間の歩みが世界的な奇跡だったと改めて痛感した。

しかし日本市場の先細りを占うように近年の収入は低減傾向。発足時の10から40に増えたクラブの多くがも経営難に直面、14年度からスタートする3部制を前に新たな打ち手が迫られている。そこで山下氏ら若手スタッフが3年前からアジア戦略を進めてきた。中東や東南アジアで放送地域を拡大しての露出獲得。タイベトナムミャンマーのサッカー界と協定してプロリーグ運営、選手・指導者・審判の育成といったノウハウなどを提供してきた。すでにJリーグの各クラブが続々と現地で交流している=下記参照=。130309Jリーグ提携P

ただ、アジアでも欧州サッカーは人気コンテンツ。メッシやC・ロナウドのサーカスのようなプレーは日本選手に真似できない。どう対抗するのか疑問に思っていたが、山下氏は①昔、日本が弱かった②歴史が浅い③アジアにいること――の3点をJの「強み」に挙げる。一見、①や②は「弱み」に見えるが、相手国も「なぜ日本は急に強くなったのか」と興味津々なわけだ。欧州サッカーに比べての「弱み」を、むしろ「強み」にしてアジアのサッカー界に食い込んでいく「逆転の発想」だ。

●サッカーが生み出す“大東亜共栄圏”
プレミアに流れているアジアマネー800億円の1割でも呼び込めればJの収入は200億円になる。しかし放映権などの本格的なマネタイズは中長期の目標らしい。むしろ日本のW杯出場を脅かすくらいに各国のレベルアップを“アシスト”、難民キャンプの子供たち向けのサッカー教室といったソーシャル事業も積極的だ。「同じアジア人として一緒にサッカーの市場を大きくしたい」(山下氏)という姿勢なので、各国のサッカービジネスの実力者も共鳴しやすい。タイのタクシン元首相がマンチェスター・シティの元オーナーであることからも分かるように、アセアン・サッカー界の実力者には各国のセレブが多い。

彼らが現地の政財界の人脈を紹介してくれれば、Jにとって「財産」になるだけでない。Jと関係の深い日本政府や日本企業がアジア展開をする際の大きな「財産」にもなるのだ。想像の話になるが、たとえば仮に、柏の親会社である日立製作所が発電所事業を展開したいとき、欧米や中国、韓国との受注競争に勝ち抜く上で人脈が「武器」になるのではないか。

「ただ単に日本のサッカーを強くするということではなく、これは社会的革命である」――。Jリーグ誕生当時、初代チェアマンの川淵三郎氏はそう意気込んだ。今度も日本サッカーの国際展開にとどまらず、国の復活に寄与するのがビジョンらしい。山下氏は「日本の将来はまだまだ明るい」と目を輝かせる。日本経済復活への熱い思いも秘めたアジア戦略は、例え方に異論もあろうが“大東亜共栄圏”の理想を彷彿とさせる。欧米とは違う「共栄共存」の価値観。がめつい中国や韓国も容易に真似できまい。まさに日本人の強みを生かした「ジャパンプレミアム」的な戦略だ。経産省もアニメや音楽、ファッションなどと並び、Jリーグをクールジャパンのラインナップに入れて後押しを始めた。

日本サッカーの「第2革命」が成功するか、目が離せない。

新田 哲史
Q branch
代表メディアストラテジスト/コラムニスト

新田 哲史
アゴラ編集長/NPO法人ICPF 情報通信政策フォーラム理事/ソーシャルアナリスト/企業広報アドバイザー

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