資源の物理的制約は本質的な問題ではない

2013年03月24日 10:08

辻さんの議論は、いつも地球が終末に向かっているみたいですが、鉱物資源の物理的制約と経済的な所得制約を混同しているのではないでしょうか。資源が有限であることは自明ですが、その中でも人類はここ200年で1人あたり100倍以上の所得を実現し、今後も成長が予想されています。


経済学は資源配分を扱う学問だから、資源が稀少になると何が起こるかはよくわかっています。その価格が上がって生産が増え、結果的に必要な供給量が維持されるのです。歴史上、特定の鉱物資源が絶対的なボトルネックになったことはなく、食糧生産が絶対的に不足しているわけでもない。ほとんどは所得分配という経済問題なのです。

1972年、ローマクラブが「地球上の天然資源は1992年に枯渇し、人口爆発によって21世紀の地球は破滅する」と予測して世界に大きな衝撃を与えましたが、今では覚えている人もほとんどいないでしょう。それ以来、この種の終末論が的中したことは一度もない。リドレーが指摘するように、資源は有限だがイノベーションの可能性は無限だからです。

「ピークオイル」説も昔から繰り返されていますが、ヤーギンは「シェール革命で世界の石油生産量は今後10年で20~25%伸びる」と予測しています。IEAをはじめ多くの研究機関が、シェールガスの埋蔵量を200年以上と予想しています。価格は一時的には上がるかもしれないが、それはさらに新しい技術開発のインセンティブになります。

新興国の経済発展によって「先進国の人々の生活水準は低下し続ける」という辻さんの結論は誤りです。これは比較優位という経済学の根本原理であり、グローバル化はゼロサムゲームではないのです。先進国で所得格差が拡大するといった問題は生じるでしょうが、これは政治の問題です。

食糧問題や人口問題については、川島博之氏もいうように、農業技術の進歩が人口増をはるかに上回ります。ここでも問題は、地球上の大部分の人々にそういう技術が利用可能でないことです。本質的なボトルネックは特定の資源の絶対量ではなく、それを効率的に配分し公正に分配する政治の問題なのです。

ただし化石燃料を浪費してはいけない、という辻さんの指摘には賛成です。日本経済の1次エネルギーの90%以上は化石燃料であり、円安でその価格上昇の影響は深刻です。化石燃料への依存度の削減こそエネルギー政策の最優先課題です。その代替エネルギーとしては、非在来型ウランが9000年分あるともいわれる原子力がもっとも有望でしょう。

池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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