デジタル教育反対派への10の質問 --- 中村 伊知哉

2013年03月29日 13:53

橋下大阪市長が2015年にデジタル教科書の全市展開を宣言し、実証実験に動いています。2月には東京都荒川区の西川区長が2014年度に一人一台を区内全小中学校で実現する意向を表明しました。東阪ツートップの力強い動きを受け、地方都市でも今年内に一人一台を達成する自治体が現れそうです。

すごい。政府が2020年を目標に据えているのに対し、デジタル教科書・教材協議会(DiTT)は2015年の目標を掲げてきたことについて、そんなムチャなとあちこちから批判されていました。でもこうなると2015年達成もあながち夢ではない。そうでなくちゃ。自治体主導、現場主導で進めていきたいと思います。


しかし、なおデジタル教育に対する批判はあります。デジタルのメリットとデメリットの議論、やるかやらないかの議論を続けているのは日本だけだという揶揄を海外から受けておりますが、そうは言ってもまだ残ってる。ぼくはメリット99:デメリット1と見ているので、「やる」と決断して動いています。これに対し反対派は、デメリットばかりを拡大・指摘する傾向にあり、バランスを欠いていると見受けます。まぁそれはいいんですが、じゃぁどうするか、が不足しているんです。

これまでぼくらは、そのデメリットについて、そのリスクやコストについて、説明とか検証とか成果とかを求められ、質問を浴びてきました。でも、もうそういう段階ではない。やらないことのリスクや、やらないことのコストのほうが目立ってきています。これからは、反対派に対し、そのリスクやコストについての説明責任を問いたいと思います。こちらから質問をしていくことにします。

さて、そこで、よく浴びせられるデジタル教育批判に関して、10問ならべてみます。反対派のみなさん、お答えください。

1 デジタルによる学力向上の効果について、プラスの成果は日本にとどまらず全世界から報告されている。これに対し、非デジタル学習のほうが学力向上効果が高いという成果、評価を示してもらえませんか?

2 一覧性に欠けるなど、デジタルは紙のよさに勝てないのではないかという指摘について、紙には紙のよさがあり、鉛筆には鉛筆のよさがある一方、世界と瞬時につながり、映像も音楽も利用・生産できるなど、デジタルにしかできない効用があると思うが、アナログはその機能をカバーできますか?

3 デジタルがもたらすゲーム的なわかりやすさは思考力などと無関係ではという指摘について、では勉強へのインセンティブを高める点で何が問題なのか、インセンティブを高めることに関するアナログの優位性は何なのかを教えてもらえませんか?

4 デジタルを導入すると画一的な○×学習になるという指摘について、ネット授業は世界中の多様な考えの人たちと一つではない答えを教え合い学び合うことができるが、それに比べ紙のドリル学習のほうが画一的でないとする理由を教えてもらえませんか? つまり、問題はデジタルかアナログではなく、授業の内容だと思いますがいかがですか?

5 デジタルを導入すると読まなくなる・書かなくなるという指摘について、アナログ授業でも書かせなければかかないし、デジタル授業でも書かせれば書くし、つまり、問題はデジタルかアナログではなく、授業の内容だと思いますがいかがですか?

6 目が悪くなり姿勢が悪くなるという指摘について、その研究報告はまだないし、かつてテレビを見る赤ちゃんのほうが目がいいという研究もあったのですが、これに対し、本を暗いところで読んでいたぼくは目が悪くなりましたけど、それはデジタルかアナログではなく、授業の内容だと思いますがいかがですか?

7 先生方が使えないから問題だという指摘について、2歳児でもタブレットをすいすい使いますが、本当に先生が使えないと言っちゃって大丈夫ですか? 韓国ではほぼ全ての先生が問題なく使ってますけど、日本の先生は能力が低いと言っちゃって大丈夫ですか?

8 コストがかかるという指摘について、確かにコストはかかりますが、日本の公教育/GDPは先進国中ほぼ最下位で、教育にもっとお金をかけていいという気がするのですが、例えば小中学生1000万人に1万円のタブレットを配ると1000億円、それは年間の道路予算10兆円の100分の1だから、365日のうち3-4日、道路工事を休んだらできちゃう規模で、工事4日休んで全ての子どもにタブレットを!程度の話なんですけど、そのコストは国家として投資すべきではありませんか?

9 やる必要のあるところだけ実行すればよいという指摘について、隣の学校では使ってるのにうちは使えないのは不公平という格差問題のほうが大きくなると思うが、それにはどう答えますか?

10 教育を産業にすべきでないという指摘について、産業領域としてボリュームがないと投資が行われず技術も進まないので、それでよいなら日本はアメリカや韓国の機械や教材を導入することになりますが、そのほうがよいですか? アメリカではPCを教育のためにと消費者に勧めており、韓国ではスマートテレビやタブレットを教育のためにと広告しているが、その姿勢が弱い日本が正しいのですか? 韓国はデジタル教育をODAで中央アジアやアフリカに輸出し市場開拓を国家戦略として進めているのであって、教育を経済手段にする貴国はダメだと韓国に言えますか? つまりですね、教育に多くの投資が集まり、GDPのうちの多くが消費され、教員を含む関係者の収入が上がり、教育産業輸出国家になることの何が悪いのでしょうか?

番外 要するに、デジタル教育はやめたほうがいいんですか? どうすればいいんですか? 推進する首長たちは、リスクを取り、コストを払い、説明も怠りません。一方、反対派は体を張ってでも止めるべきだと思いますが、そんな話は聞きませんよね? ごめんなさい、答えにくいかもしれないので、問いを変えます。デジタル教育をしないほうがいいとしている手本となる国があれば、教えていただけませんか? あの国ぐらい?


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年3月25日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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