失業増大時代に身構えよう --- 岡本 裕明

アゴラ

日本の大学生の就職内定率は2月1日時点で81.7%と2011年を底に回復基調を辿っているようですが、これは分母が就職希望者。全大学生を分母にすると60%台前半まで落ち込みます。一方、日経新聞の特集「学歴社会のミスマッチ」には韓国や中国でその就職率の悪さが取り上げられています。


韓国の東大とも言われるソウル大学を出ても3人に2人しか就職が出来ないという記事には衝撃すら感じます。ちなみに私の会社でアルバイトをしているソウル大学の男子学生君は「自分は技術系だから就職は大丈夫だと思うけど文系は本当に厳しい」と。一方でサムスンに就職したいかと聞けば「うーん」。その心は仕事がきつすぎるとのことでした。

さて、韓国の大学生の就職率の低さも昨日、今日に始まったわけではなく、このところずっと50-60%台(分母は全大学生)ですが、この数字にはいわゆる非正規雇用や店先の店員も入っており、結果として本当の意味での正社員は30%程度とされています。理由は会社が少ないからとされています。結果として給与は極端に安く、場合により時給360円の仕事に甘んじることもあるのです。

中国でも事情は同じで新卒の就職率は8割程度とされています。おまけに定着率も悪いし、コネ社会ですからいわゆる庶民には家を買うのは不可能に近いということになりそうです。100㎡の部屋に38人が住むマンションの記事には驚愕すら感じます。一人3㎡ですから。

では日本の今後は安泰なのでしょうか?

最近日本では一般的になってきたシェアハウス。この大きさがどれぐらいかと言うと個室が4畳程度でしょうか? つまり、6.5㎡です。最近は晩婚化、一生独身派も増えていますが、その理由のひとつには長期的な社会安定感がなく、昔なら夫婦2人で3人力だったものがいまや、2人で1.5人前になってきているのかもしれません。それならば自分ひとりで頑張ったほうがよいという発想でしょうか?

日本の企業はTPPによってより国際化していくでしょう。そしてその際に日本人より優秀で安い賃金で確保できる外国人の採用が増えていくはずです。つまり、今までは工場などで働くスタッフを現地採用していたものが今後は現地で正社員を確保する動きに変わってくると思われます。よって、日本の比較的高い就職率は長期的には下がってくるとみた方が正解だと思っています。

また、大学生の質の問題もあるかと思います。大学全入時代ということもあり、誰でも大学卒になれるわけですが大学生の数の増大に対して企業の就職受け入れ口はそこまで増えていないという問題もあります。つまり、就職難が如何にも企業側や日本経済に原因があるという報道が目に付きますが、そうではなくて、大学生が増えたという事実の方が主因ではないでしょうか?

スペインでは若者の失業率が5割を超えています。結果として就職口を見つけるためにスペイン語の通じるメキシコや南アメリカ諸国に出て行く若者も多いと報道されています。日本ではITや便利なソフトウェア、更にはロボット化、機械化のおかげで企業は人海戦術という方法をとることは少なくなりました。本社でも管理部門はコンピューターとソフトウェアが主流ですから人はもっと絞り込めるでしょう。

スペインの若者はスペイン語圏に脱出する方法がありますが日本人は言語に限っていえば日本だけしかいくところがありません。日本の若者の英語水準は一部の人は高くなったと実感しますが、それはほんの一握り。ですが、英語が操れるから就職が出来るともいえそうです。

そういう観点からは日本の失業対策は問題が顕在化する前に行っておくべきかと思います。税額控除できる職業訓練やアダルトラーニングスクールなどを通じて自己研磨し、専門性や知識を高めるアシストなどは長期構造改革の一案ではないでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年3月30日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。