どこまで上がる株式市場 --- 岡本 裕明

アゴラ

日本の株式市場が賑わっています。13,500円台は年頭に専門家の中で最も強気だった人の予想でした。まだ、4月だということも考え合わせればすでに年内15,000円台もあるという声すら出てきました。

株式はそんなに上がり、儲かるのでしょうか? 一般投資家が儲けられる環境にあるのでしょうか?


私は中学生以来40年近くほぼ毎日、市場との対話してきましたが、それを経験則とするならば長期的には上昇相場に見えますが、目先、一旦天井をつける様な気がします。それと一般投資家にはとてもリスキーな相場つきになっていると申し上げておきます。

日経平均は選挙前の8,500円程度から135,000円まで約5,000円という幅をわずか4か月で達成しています。当然ながらさまざまな指標は過熱感を示しているのですが、指標というのは過去をベースに将来を予想するというものですのでレジームチェンジのような場合にはそれらが参考になりにくくなることは確かです。

よって株式専門家もこの流れが変わるまではそれについていくという姿勢のコメントが目立っています。

ではその流れとは何でしょうか? 大きくは二つあると思います。一つは海外からの資金の流入。もともと日本の株式市場は海外のマネーが主流ですのでそれが流入する限りにおいて強気だと思われます。事実、年初に多くの海外ファンドや機関投資家が日本の株式を強気で組み込みましたので相当の利益が既に出ているはずです。後は出遅れていた海外筋が日本市場に資金を流しているということになりますが、これは永久に続くものではありません。株というのは「売ってなんぼ」の世界だからです。

次に日本の個人投資家の動きです。こちらは長いトンネルを抜けて「日本の株はロング(買い)でも儲かるんだ」ということを教えてくれたような気がします。そして信用取引の買い方は平均で15%ベーシス以上改善し、平均値でプラス4%台になっています。ちなみにプラスというのはすごいことなのです。株式は長期で見れば基本的にゼロサムゲームですから個人投資家の収益が上がっているということは外資などのプロといい勝負をしていると言えるのです。

ところが、このところの市場はいわゆる循環物色になりつつあります。これは上がりすぎたものが下がり、下がりすぎたものが上がるという繰り返しで個別の株価でみると上がっているものと上がっていないものが明白になってきているのです。なぜでしょうか?

株価に永遠はないのです。ずっと右肩上がりなどはあり得ないことなのです。株価はあくまでもその会社の将来性か利益ベースで決まってきます。この4か月の日経平均5,000円上昇というのは円安という収益部分(実際は為替予約をしていますからすぐにその反応が出るわけではありません)とアベノミクスの効果を先取りした部分だと考えてもよろしいかと思います。となると今後上値を追うには実際の収益がついてくることが重要になってくるのです。

では収益は円安になれば上がるのか、といえばそのような業種は割と限定されます。内需についても金融緩和で不動産が上がるというより円安で海外マネーからすれば日本の不動産が安く買え、収益性が良いことが主因ではないでしょうか? 確かにマンション業者も好調だとは聞いておりますが、それは消費税が上がる前の駆け込みであって人口が減少している日本においてマンションが飛ぶように売れるのはやはりどこか変なストーリーなのです。

1980年代のバブルの頃、主婦が株式で大儲けしたという話はよく聞きました。1929年のアメリカの大恐慌直前の株式ブームの際にはウォール街の靴磨きの少年ですら株価を気にしていたのです。つまり、誰でも儲けられるというシグナルが出たときは撤退を意味するのであります。

今の市場は明らかに踊り狂ってます。市場と対話をし続けている私は売買のスタンスを変え、回転を速めると同時に一部資金を引き揚げ、キャッシュ化を意識しています。バブルの崩壊、ライブドア事件に端を発する新興市場の崩壊などを経験してきた者にとって今日の相場つきは久々のお祭りでありますが、そろそろ様子見も必要で相場つきが弱気になったところで手持ちキャッシュをいつでも投入できる状況にするつもりです。

株価が本当に上がるのは構造改革ができてその業種が比較的中長期的に利益が確保されることがみえることが重要だと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょうか。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月13日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。