起業家が賞賛される社会 --- 岩瀬 大輔

2013年04月17日 12:10

Twitter/Square, Skype, Pinterest, Evernote, Airbnb, Uber といった世界を代表するベンチャー企業の創業者の話を間近で聞きながら考えた。なぜ彼らは社会、世界からの賞賛を得ているにも関わらず、日本社会で起業家は賞賛されないのだろうか、と。


ステージ上で本当に嬉しそうに、情熱的に自分たちが思いえがく世界、新しいサービス、そこに至るまでの苦労話を語る彼らの姿を見ていて、彼らは日本でいう「起業家」=「実業家・商売人」のイメージより、「発明家」に近いのではないかと思った。まるでエジソンのように(エジソン会ったことないですが)。こういうサービスがあったらいいのに、なぜないんだろう、やってみよう、失敗しながらどんどん反復し、思いを形にしていく。

彼らは本当の意味で世界を変えつつある。だって、Twitter がない世界なんて、もう考えられないじゃないですか。Skype もしかり。Airbnb は日経新聞の一面でも取り上げられていたが、一晩の宿泊数ではヒルトンホテルに匹敵するとかしないとか。忘れてはならないのは、これらのサービスも、彼らという一個人、ひとりの起業家が行動を取らなければ、存在しなかったことだ。

一方、日本では「ITベンチャー経営者」というと、世間では「商売人」といったイメージがもたれている。「アントレプレナー」とは響きが随分と違う。松下幸之助や本田宗一郎が尊敬されたように、ネットベンチャーの経営者が社会から相応の敬意を集めないのは、なぜだろうか。

(ちなみに、私は自分のことを本当の意味での「起業家」だとは考えていない。ライフネット生命という事業アイデアは自分のものではないし、最初から100億円を超える大企業の資本参加を得て作った会社であるから、いわば会社勤めのビジネスパーソンが新規事業に携わったようなものだ。しかも事業はまだ発展途上であり、到底成功したとも言えない。したがって、以下で書く「起業家を賞賛せよ」というメッセージは、自分について書いているわけではないことはお断りしておく。)

ひとつには、よく指摘されているが、エスタブリッシュメントと呼ばれる政治家、官僚、大企業経営者、そしてメディアが彼らのことを十分に認めていないことがあるように思える。いや、実は政治家は中小企業経営者などとは上手に付き合っているように思える。むしろ、官僚とメディアの人たちの意識にギャップがあるというべきか。今後は社会をあげて、成功した起業家を認め、賞賛される社会を作っていくことが望ましい。

一方、これまでのITベンチャー経営者たち側にも問題があったのではないか。「日本社会では出る杭は打たれる」とクレームするだけでなく、社会からみてなぜ十分な評価を得られていないのか、考えてみる必要があるのかも知れない。公私にわたる行動・言動・立ちふるまいが、社会の目にどう映るのか。一般の人が「自分の子どもにも、ああいう人間になって欲しい」と思ってもらえるようになっているだろうか。

成功したサービスは大きな社会的影響力を持つのだから、それに見合った社会的な行動が求められるのも当然だろう。政治家であれ官僚であれ大企業のトップであれ、プライベートで派手に遊んだりしていたら当然社会から尊敬はされないだろうから、ベンチャー経営者も、自分の努力で勝ち取ったものだとはいえ、同様に考えるべきではないか。

すなわち、これから日本社会で起業家が賞賛されるようにするためには、すでに大成功した起業家たちこそが気を引き締めて、公私にわたって社会からの信任を勝ち得るよう、言動と行動と立ちふるまいに気を使っていかなければならないのではないか。霞が関や大手町やメディアからみても「立派な人だ」と言ってもらえるように行動し続けなければならないのではないか。大変おこがましいのですが、自戒の念もこめて、成功されている先輩や友人のベンチャー経営者の皆さんに向けてお願いのメッセージとさせていただきます。いま、生まれつつある流れを、止めないためにも。


編集部より:このブログは岩瀬大輔氏の「生命保険 立ち上げ日誌」2013年4月17日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方は岩瀬氏の公式ブログをご覧ください。

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