アベノミクスは「資産インフレ」か --- 岡本 裕明

2013年04月18日 11:18

イギリスフィナンシャルタイムズの記事に物価インフレと資産インフレという興味深い表現がでていました。今の状況をたった一言で見事に言い当てていると思いますが一般的には案外、使い分けていない気がします。今日はこのあたりを考えてみましょう。


我々が一般にいうインフレというのは消費者物価の上昇のことだと思います。例えば70年代の石油価格の上昇で食品から日用雑貨に至るまであらゆるものが年率二ケタで上がっていったことは物価インフレの顕著であります。つまり、一般市民の生活を直接的に脅かすのが物価インフレということでしょうか?

さて、80年代後半のバブル経済の時、インフレ率はどれぐらいだったのでしょうか? 1986年から1988年の3年間の平均のインフレ率は年平均でわずか0.47%に過ぎないのです。このころは日本中が不動産や株式のバブルに湧き、踊った時代です。これは過剰流動性による資産への資金流入から起きたまさに資産インフレそのものなのであります。

日銀は速水総裁の時代である2000年ごろから急速に金融緩和を推し進め、そのマネタリーベースは上昇の一途をたどっています。福井総裁の時の2006年に政府の反対を押し切って量的緩和を解除し、マネタリーベースは一旦下落するもののその後を引き継いだ白川総裁の「積極的」な金融緩和で2012年には2006年のマネタリーベースを抜き、歴史的な金融緩和が起きているのです。ちなみに1990年ごろにようやく40兆円のレベルでしたが現在140兆円、さらにそれを倍にするわけですからいかにその規模を拡大させているか、お分かりになるかと思います。

今、アベクロコンビが目指すインフレを2年で2%という分かりやすい目標はどちらのインフレを言っているかといえば物価インフレであるはずなのですが、現状起きつつあるのは資産インフレであります。例えば速水総裁が行った金融緩和で潤ったのは株式市場でした。1万円を割った株価は一気に反転し、18000円台まで上昇するのですが福井総裁が引き締め行ったところ、若干のタイムラグを経て再び株価は10000円を割り込むのです。

つまり、金融緩和が株式市場に一定の効果があったことは見られるのですが、インフレについては2002年の金融緩和から引き締めの2006年までほぼマイナスのままでありました。(2006年のみプラスの0.24%です。)

では物価インフレは起きうるのでしょうか? アメリカをみたらよい参考になると思うのですが、QE3まで進めて来たのにインフレには至っておりません。カナダもこのところ、インフレ率が下がりつつある状況で金利を上げるといい続けた中央銀行はむしろ、言い訳を探すのが大変な状況になっているのです。

なぜ、インフレは起きないのでしょうか?

大きくは二つ理由があります。ひとつは日本やアメリカは既に成熟経済の水準に入っており、物欲が落ちているのです。日本が高度成長期にある頃は常に上のものを求め買い替え需要がありました。今、生活水準の向上に伴い物質的満足度から精神的満足度を志向するようになっています。更に少子高齢化はやはり、消費の底上げは期待できません。ある本によると人口ピラミッドで45歳の層が消費の最大のドライバーであるとしています。

二つ目の理由としてグローバリゼーションによる製品価格の想定を上回る下落であります。最近の消費者が求める主流のひとつに家電や衣料の量販店で販売しているものが多いかと思いますが、国際的価格競争によりその下落率は製造メーカーの予想をはるかに上回るものとなっています。

つまり、内からの理由と外からの理由が複合的に絡んでいると言えるのではないでしょうか?

結果としてアベクロコンビが作り上げるのはやはりAsset Bubble Economy(資産バブル経済), 略してABEなのであります。それは結果として持てる者は更に富み、持たない者の生活は変わらない、という状況を作り出す公算はあります。経済が富裕層から庶民へ循環する状態が作り出せればよいのですが、そこまで到達できるか、興味を持って見守るしかないのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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