アベノミクスについていろいろ議論があるが、政治は結果である。世の中の空気をガラリと変え、莫大な資産効果を生み出した今までの第一、第二の矢を使ったアベノミクスを私は評価したい。しかし、総理がおっしゃるように、勝負は、重要なのは、ここからだ。アベノミクスが真の経済成長につながるためには第3の矢(規制改革)に加えて第4の矢が必要だ。第4の矢こそカギを握る。今回はこの「第4の矢」について語りたい。私はこれを招待を受けたハーバードビジネススクールで訴えてくる。
私は第一次安倍政権で、総理の司令塔である内閣府の大臣政務官をやらせていただいた。大統領的首相をめざし内閣府の機能強化を狙った安倍首相のまさに中枢であった。当時から安倍首相は経験未熟な私や暴走気味の副大臣であった渡辺よしみ現みんなの党党首のアイデアをじかに聞いてくれた。第二次安倍政権の諸政策はまさに私たちが内閣府時代にあたためていたものだ。先日政権幹部にお会いした時に「あん時の政策全部やっちゃうよ(笑)」と自信満々の笑顔で言われた。
政府系ファンドや日本のインフラや技術の世界展開や世代間資産移転や大学入試へのTOEFL導入等である。しかし、これらの政策はへそではない。へそは第3そして第4の矢である。第3の矢の規制改革は参院選後進みそうである。私も手ごたえを感じている。これについてはまた改めて書きたい。第3の矢より私がへそに近いと思っているのが第4の矢である。
それは「市場を通じた経営者の交代」である。株主がうまく経営できない経営者を交代させる、資本主義なら当たり前のことを当たり前に起せる状況の整備である。
「敵対的買収は日本の風土には合わない」・・・なんて声が色んなところから聞こえてくる。しかし、日本経済が興隆していた明治や大正時代には、日本では敵対的買収なんて日常茶飯事であった。
東京市場のPBRは三月末でようやく1を超えたが、ながらく1以下であった。上場企業を平均したら解散価値の方が時価総額より高かったのである。あきらかに株が割安、つまり経営者は稼ぐ力がなかったのである。こういう状態になれば世界中の市場では株式市場を通じて株主が経営者の交代を実施する。それにより、稼げない経営者は後退させられる。この緊張感が経営者と経営者を選出する企業をしゃっきとさせている。これが日本にないのだ。
ホリエモンや村上ファンドの村上氏が逮捕されるまで、日本でも市場を通じた買収が起こっていた。しかし、彼らの逮捕やブルドックソースを巡るナイーブな攻防劇やその後の中国企業の台頭を機に、国民感情や国益保護への配慮という議論を巧み使って、大企業に買収防衛策が堂々と導入された。
経済団体等からも「国益保護のために」ということで中国はじめとする新興国企業からの日本企業買収を阻止するための手立てについて多くの陳情を受けた。国益保護の名をかりた内輪の組織保護のように思えた。
そういう陳情がくるたびに私は「そんなに買収が怖いのなら、上場やめるのが一番の策ではないですか?御社なら自己資金もあるし銀行からいくらでも借りられるでしょう。株式発行して資金調達なんていらないでしょう。非上場化されるのが一番ではないですか?」と真摯に対応していた。そのたびに大企業の経営者は「いやあ、一部上場というのはブランドなんですよ」と苦笑いしていた。
この認識がなんだかなあ~という感じなのだ。上場とは成長し続けることを株主に約束し、その約束を果たすことである。その約束が果たせなくなったら果たせる人物と交代することである。
第4の矢が、市場を通じた経営者の交代を実現した時に、真の企業の成長とそれを通じた健全で持続可能な経済成長が実現できると思う。その時に本格的な株価上昇が起こる。それがさらなる資産効果を生み、巨大な個人消費経済である日本経済を持ち上げる。
明日から渡米する予定だ。つい最近物騒な事件があったあボストンに招待された。私は政治家として初めてハーバードビジネススクール、HBSのケースの主人公になった。HBSの学生やOBの方々はご理解いただけると思うが、HBSのケースは企業のものばかりではない。いまや私のケースのように、米国内外の政治や政府のケースから、レディ・ガガのようなアーティストのケース、スポーツ選手やチームのケースまで多岐にわたる。HBSはビジネススキルも教えるが、メインはリーダーシップいわゆる決断の練習をする学校である。
日本のグローバル化に関しての、日本政治のリーダーシップがテーマがケースを学生たちと議論してくる。そのへそが第4の矢だと思う。資本主義で当然の経営者の交代が起せたら日本の資本市場も日本企業も本格的にグローバル化するだろう。
政権中枢の方々にお会いするたびにこの第4の矢が放たれる実感を強く持っている。期待を込めてアメリカで吠えてきたい!乞うご期待。