1兆円援助の檜舞台TICADが盛り上がってない件

2013年04月18日 21:08

6月1日から3日まで、横浜でTICAD V(第5回アフリカ開発会議)が開催される。5年に1度、アフリカ各国の首脳はじめ閣僚や関係者が日本に一堂に会するビッグイベントだ。日本の政府開発援助(ODA)はかなりの額をアフリカに向けており、前回2008年のTICADで支援額を倍増すると宣言した通り、近年も増加傾向にある。その額は無償の資金協力と技術協力だけで年間約1500億円、2011年には3000億円だったので、この5年間で実に約1兆円を無償で援助した計算になる。5年に1度のTICADは、まさにこの1兆円の成果を世に問う場のはずである。


しかし、開催1ヶ月前に迫り、関連イベントも開かれているのに、いまいち盛り上がりにかけている気がしてならない。この原稿は出張先のエチオピアで執筆しているのだが、現地でTICADという文字は一度たりとも目にすることがなかった。唯一、エチオピア外務省と話している折に、こちらから話題を持ち出すと、ようやく返答があったくらいだ。AU(アフリカ連合)の会議場をもつエチオピアでは、3月にTICADの閣僚級準備会合があり、岸田外相がエチオピア首相と共同議長をつとめたばかりだ。そのエチオピアでもこれなので、他のアフリカ諸国でどれだけの盛り上がりをみせているのか心許ない。せめて空港にTICADのポスターでもあればよいが、見えるのはサムソンのテレビくらいだ。

日本でも状況は変わらない。もちろん開発業界では話題にのぼるが、どれだけ一般国民が知っているのだろう。5年で1兆円の税金をかけた事業の檜舞台の場なのだから、政府は力を入れて情報発信すべきであるし、国民とメディアはもっと注視してもよいのではないか。

ところで、AUの会議場は中国の150億円の出資によって最近建設された。私も準備している国際会議の会場として使えるか下見に行ってみたが、実に巨大で見た目のよい目立つ建物だった。エチオピア国民のみならず、アフリカの各国首脳はこれを見る度に中国の存在を思い起こすだろう。しかし、現地エチオピア人の情報によると、その中身はかなり問題があるようだ。3階の会議場に行くのにエレベーターが1つしかなく、階段もない。2-300人の会議参加者が移動するのに何十回も往復するのを待たなければいけないという始末だ。停電が起きたらどうするつもりなのだろう。建設されたばかりなのに、トイレもひどい悪臭を放っていたという。

AU

中身の質はどうであれ、中国のアフリカにおける存在感は突出している。他のアフリカ諸国でも、市内の目立つ場所に国会議事堂やスタジアムなど巨大建築物を建設し、中国語の看板を高々と掲げて、中国人労働者が建設現場で働いている。その「援助」と引き換えに、アフリカに眠る資源を買い漁っているわけだ。一方で、日本の援助はとにかく目立ちにくい。陰徳ではないが、これだけの支援をしていることが関係者以外にはほとんど伝わっていないのではないか。身を削っている当の日本国民ですら、何が行われているのかほとんど知らない。

たとえば、ODA白書を読んで気づいたのだが、2011年にはコンゴ民主共和国(DRコンゴ)に1200億円もの無償贈与を行っている。一方で政府貸付がマイナス1000億円で、合計額は186億円となっている。なんだか変だなと思って他の文書をあたってみると、900億円の債務を免除したとある。つまり、900億円の借金をチャラにした、言いかえると融資を焦げ付かせたということだ。これが一般企業なら責任者の首が飛ぶところだが、日本政府はどういった説明をしたのだろう。ODA白書には全く説明が載っていない。DRコンゴといえば、金やレアメタルなどの資源大国だ。それゆえに紛争も後を絶たなかったが、近年は比較的安定しており、経済成長率も6%を超えている。これが経済成長もマイナス、債務超過で破綻寸前の国なら債務免除も分かるのだが、これだけ成長しているのに、なぜ今頃という疑問は残る。ましてや、輸出入ともに中国がトップを占めており、これでは中国がビジネスしやすくなるように、債権放棄したようなものだ。

こんな状態では、TICADがいまいち盛り上がらないのもうなずける。TICADに合わせてアフリカの公衆衛生向上に寄与した人物に贈られる、賞金1億円の野口英世アフリカ賞をご存知の方はどのくらいいるのだろう。ノーベル賞に肩を並べる賞にしたいとの希望だそうだが、ノーベルは私財を投じたのであって、税金を投入するのとはわけが違う。ノーベル平和賞に対抗して中国が新設した孔子平和賞ですら120万円だった。同じ1億円ならアフリカにソーシャルイノベーションを起こすアイデアを一般公募して、そのスタートアップ資金として賞金を提供する方がよっぽど盛り上がるし、アフリカの為にもなるだろう。また、今回のTICAD議長は5年前と同様に森元首相が務めるが、政界を引退した森さんにいつまでも日本の顔役を任せるのはいかがなものだろう。アフリカにも日本国民にもその程度の重要度というメッセージを与えはしないだろうか。

ODAは貴重な国民の税金である。しっかりと、戦略的に、効果的に使ってほしい。そして、せっかく開催するのなら、TICADという5年に1度の好機をいかし、今後の成長株であるアフリカとの戦略的パートナーシップが強化されることを望む。

学びのエバンジェリスト
本山勝寛

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