都市への人口集中には反対する

小幡 績

久々の投稿だが、久々に池田信夫氏に強く反対する。

池田信夫氏は、人口の都市集中が必要だとしているが、これは、日本社会と日本経済を弱くする。

人口の都市集中とは、何を指すのかについて、議論が必要であり、都市化率の定義は各国で異なるので、国際比較にも注意が必要だ。ここでは、そのような厳密な定義ではなく、単に、東京都心部などに人口を集中させるべきか否かについて議論したい。

日本が東京一極集中を推進すれば、ついに韓国に負ける日がやってくる。


韓国経済と日本経済の大きな違いの一つは、ソウルと東京の違いだ。

韓国は、まさにソウル一極集中が進行し続けている。ソウル旧市街は山に囲まれ、平地が少ないことから、海外ファンドによって買い占められると暴騰するという特徴があるだけでなく、広がりがもてない。そこで、郊外に大規模な開発が進んでいる。

問題なのは、ソウル以外の都市の特徴がなくなってきていることで、日本の古い世代になじみのある釜山は、第二の都市というよりは、ソウルからどんどん離されていく都市でしかなくなっている。

日本の魅力は、東京と名古屋、大阪はまったく違うことであり、京都や神戸、横浜といった魅力ある都市があり、福岡、仙台、札幌は、さらに独自の魅力がある。もちろん、沖縄は別世界だし、各島ごとにまったく表情が違い、与那国に至っては、宇宙的な不思議さがある。

また、各都道府県は、藩の時代の文化を残しており、各地、多種多様で、地方講演の後のお土産選びには本当に苦労する。

これほど魅力的な地方都市が多数ある国も珍しく、また、地方は都市でない地域にもちろん多くの魅力が残っており、私が米国の友人たちを含めて4人で行った新婚旅行先の、妻籠の旅籠や高山、そして、下呂温泉の奥にある付知峡の電気のない宿など、魅力が溢れ、いくら旅しても味わいつくせない魅力が、日本中にある。

こんな国は世界に珍しい。

そして、これこそが、日本の経済の底力にもなっている。

日本人がグローバルに進出していない現代においても、日本人の多様性は、飛びぬけている。僕らは、出身都道府県をよく話題にするが、それで話題が尽きないほど、各地方の人々はみな異なっていて、発想も異なり、面白い。

東京が魅力的な都市であるのは、その多くの若者が地方出身者であることから来ており、すべての若者が東京育ちとなったら(なりつつあるが)、大学はまさにつまらない、何の意味もない場となるだろう。

大学の友人が面白いのは、各地方が融合し、東京で悩む若者がぶつかり合うからなのだ。

中小企業も、魅力的な特産品、技術、発想など、各地域に根付いた企業が素晴らしい。京都は、その技術開発力の高さ、継続的に新しいものを生み出す力で飛びぬけているし、若者の人口減少が激しい秋田も、本来であれば、非常に教育熱心であり、秋田で育った若者の能力は高く、魅力的である。

彼女ら、彼らが、東京でぶつかり合うことによって、ある意味の異文化交流が起こり、いろんな発想が生まれるのだ。

これらを失ったら、日本は終わる。

だから、必要なことは、まったく逆で、地方から若者を継続的に輩出するメカニズムを維持するための政策だ。だから、いってい程度、地方へリターンすることが必要で、そのためには、これまでの技術や企業を生かした、地方発展が重要なのである。