ついに限界を迎えた日本の家電量販ビジネスモデル --- 岡本 裕明

アゴラ

ヤマダ電機の2013年3月期の決算が悪かったことが話題になっています。売り上げは7%減の1兆7000億円規模ですが利益は連結の純利益が62%も低い220億円になっています。この見通し修正はビックなど他の家電量販店にも影響してくるかもしれません。


ヤマダの減益の読み方は二つあると思います。ひとつは進出していた中国での不振。特に南京店は1年ちょっとで閉店せざるを得なかったというのは進出にあたり、反日運動があったとはいえ、想定以上の読み違えが生じていたものと思われます。

二つ目は国内販売においてテレビが伸びなかった、とされています。テレビについてはエコポイント付保時に2500万台以上売り上げ数年分の需要の先食いをしたといわれています。しかし、実態としてはテレビを数年で買い換える人は少ない上にテレビそのものが家庭の娯楽の王座から滑り落ちてきています。よって、想定されている来年以降のテレビの復活があるという読みは甘いかもしれません。事実、2012年の国内のテレビ販売数は2011年比で60%も低い837万台に留まっているのです。ソニーがテレビ事業の黒字化を8年言い続けて狼少年となっていますが、家電量販店におけるテレビ販売は今後も厳しい情勢が続くと見たほうがよいのではないでしょうか?

私は現状の日本の家電量販店ビジネススタイルのピークは既に過ぎていると見ています。確かに量販店に行くといろいろな商品を見比べることが出来て実に面白いとは思います。しかし、秋葉原でも池袋でも客の入りに対して手持ち無沙汰の店員がいたり、レジは空いているなどが見て取れます。いまやターミナル駅の家電量販店は巨大なるショーケースと化し、本屋と並び時間つぶしにはもってこいですが、実購入となるとネットで丹念に調べ、ブランド指定で最安値でゲットという流れになるのでしょう。とすれば、駅前の高額の不動産物件に入居する家電量販店は家賃と多数の販売員の給与を考えればハンディキャップを背負った方程式が見えてきてしまいます。

北米を見てみましょう。家電量販店のサーキットシティは2009年に倒産し、ベストバイも経営が窮めて苦しい状況にあります。バンクーバーを含むBC州でもベストバイは5店舗程度の閉店が発表されています。

先日私がベストバイで買い物をした時です。まず、店員が商品知識を十分に持ち合わせておらず、実にいい加減な説明をします。しかし、最大の問題は在庫があるかないか分からないケースがある、ということです。店頭に並んでいるサンプルの商品を見て、「では、これを。」といってから5分、10分待たせた挙句、「すみません、在庫が見つかりません」というのです。見つからないというのはコンピューター上、在庫はあるはずなのに倉庫で探したが見つからないというばかばかしくなるほどくだらない理由なのです。

このような商売をしていたら消費者はサポートはしません。事実、巨大な店はいつ行ってもガラガラ。では一般消費者はどこで買っているのかといえばアマゾンなどネット販売が大きく伸びているとみて過言はないでしょう。

日本の販売員は商品知識が豊富ですし、相談の仕方では「内情を申し上げると…」などという話を引き出すことも可能です。ですが、結果としてそこで買うかどうかという点になると数店回った挙句、ネットで購入、という人も多いのではないでしょうか? それは販売員の空振りが続くという意味でもあります。

勿論、家電量販店を喜ばせるような新たなるガジェットが登場すれば新風を吹き込むことが出来るでしょう。それが例えばソニーやグーグル、アップルなどで開発競争が進むめがね型や腕時計型の次世代のITツールなのかもしれません。しかし、それだけでは圧倒的にパワー不足であります。国全体が盛り上がるほどの消費ブームを起こすような商品がなければ国内の家電量販店の淘汰は確実に進むはずです。

駅前の一等地には昔はデパート、今は家電量販店、だけどこれからは○○というクイズがあれば実に興味深いと思います。私にはまだ、その答えが見えてきませんが。

確実にいえることは今や安定したビジネスモデルなど存在しないということかもしれません。今日儲かっても明日は息絶え絶えということが起きているのです。常に時代の三歩先を読み、努力と改良を怠らない者だけが生き残ることができる厳しい世の中だと言えそうです。

今日はこのぐらいにしておきましょうか?


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年4月23日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。