本田悦朗氏の知らない「物価」の意味

池田 信夫

紙の新聞はとってないのだが、久保田博幸氏のツイッターで教えてもらって、日経新聞の広告を見てみた。

今朝の日経新聞に広告が出ていた本田教授の「アベノミクスの真実」のメカニズムを簡素化した図が何かすごい。アベノミクスの真実って、資産バブルの形成が目的だったのか。


キャプチャ右の図が、その本田悦朗氏の本の広告である。どういういわけか日銀と金融機関は「ベースマネー」をやり取りするだけで、日本の金融機関は貸出しないらしい。お金が銀行から出て行かないのにインフレが起こるのはなぜだろうか?

それは本田氏によれば、投資家が「緩やかなインフレ期待形成」をして株価や不動産価格が上がるためらしいが、驚いたことに「物価上昇」という項目がない。どうやら彼は株価や地価などの資産インフレを物価上昇と勘違いしているようだが、株価も地価も消費者物価指数には含まれないので、株価がいくら上がってもインフレにはならない。

大学1年生でも知っていることだが、「物価」とは財・サービスの価格のことで、資産価格は含まれない。80年代後半に株価は3倍以上になったが、物価は年率1%余りしか上がらなかったのだ。今も株価や地価は上がっているが、3月のコアCPIは-0.5%で、2月より下がっている。本田氏は内閣官房参与で、本書は「安倍総理公認本」だとのことだから、安倍氏の理解もこの図の程度だということだろう。かなり恐い話だ。