育児休業期間3年延長は誰得なのか --- 三平 聡史

2013年05月02日 05:00

現在、育児休業の期間が(原則)1年から3年に延長する案が政府で検討されています。その場合、採用・雇用の現場で「女性の採用が不利」になる傾向になるのでしょうか。それとも、女性を不利に扱うのは違法なので、不利にはならないのでしょうか。


採用の場面で女性が不利な1要素として働く可能性があります。

育児休業の期間が延びる場合、代替要員の確保、復帰後の業務の維持(準備)等、企業側の負担を前提とします。現時点の検討内容では、従業員個人への公的手当の充実、は含まれていますが、企業側への支援、は含まれていないようです。

「企業側の負担」は、経営者の利害に関わるだけではありません。従業員間の不公平にもつながります。厳しい存続の競争の中、企業の存続に熱意をもって望むことは、株主・従業員・顧客という関係者すべての利害に関わることです。

以上のように、合理的・慎重な判断の結果として、女性が不利な方向に働くことを止めることは難しいでしょう。

もちろん、「育児休業の点だけを考慮」して、女性の採用を抑制する、ということは違法となり得るでしょう(雇用機会均等法5条)。また、まったく別の視点から、企業が「女性の採用」について検討、戦略策定ということも大いにありえます。

<女性の活躍・促進→プラス効果の例>

集客・ブランディング等の一環として「女性優遇」をアピール

・顧客に共感を呼ぶ
・求職者(男性も含めて)に共感を呼ぶ

収益にプラス効果

各企業が特徴を打ち出し、多様性が広がること自体は良いことです。「男女の区別」「育児休業の期間」について、どのような設定が「妥当」か、ということは一義的な正解、はないでしょう。従業員にとって「望ましいか」ということ自体、個々人によって判断が異なります。

いずれにしても、このような判断・制度設計については、企業側に「リスクや負担」が伴います。そこで、このような方針の判断については、次のように考えるべきでしょう。

<育児休業などの制度設計のイニシアチブ>

・企業の判断→優先
・政府の判断=政府が企業に法律で強制する→控えめ

極度な法の介入は、理論的には「営業の自由」の侵害となります(憲法22条1項)。極端な例として、「男女同数を雇用する」ことを法律でルール化した場合は、違憲→無効、となるでしょう。大きな枠組みで言えば、「雇用維持(→失業率低下)」と「利益増大(→景気好転)」の役割分担という問題です。

最近の傾向・主流は次のとおりです。

<雇用維持・利益増大の役割分担>

・雇用維持(失業率低下)・・・政府の役割
 →具体的には、企業の経済活動環境の整備という間接的な施策を効果的に行うことです。
・利益増大・・・企業(経営者)の役割

話を戻して、育児休業期間の延長、について、その影響として想定されることをまとめます。

<「育児休業期間の延長法案」から生じる影響(想定)>

1「女性の雇用促進」の妨害となる
 ・不採用
 ・非正規雇用化

2 企業の海外移転、海外企業の来日妨害
 いわゆる「空洞化」の要因の一環となる可能性があります。

元々、育児休業(期間延長)という制度は、女性の雇用促進、という目的から来ています。結果的に、女性の雇用促進の「妨害」という結果に結びつくことが想定されるのです。いわゆる「公的制度の副作用」として、各種の労働関係の政策についてありがちなコースに帰着します。

<公的制度の副作用>

公的制度が、その目的と逆の効果に結びつくこと
・労働者の保護目的→(例)解雇規制→非正規雇用の増加方向

なお、現時点でも、任意に=企業の判断として、育児休業を1年以上設定している企業もあります。また、大学生などの求職者には「将来育児休業を1年以上取得しない。それなのに「3年取得するリスク」を企業に想定されてしまう」と考える人も居るようです。

それなりに良いバランスに達していると思います。育児休業制度に関して、現状以上に「介入を強める」→「副作用(悪影響)の方が(本来の効果よりも)大きい」という状態であると思われます。

===以下参照条文===

[雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律]
(性別を理由とする差別の禁止)
第5条  事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

[日本国憲法]
第22条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
2(略)

三平 聡史(みひら さとし)
弁護士
弁護士法人みずほ中央法律事務所 代表弁護士

みずほ中央法律事務所 オフィシャルサイト

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