壊れゆく内田樹氏

2013年05月08日 11:36

内田氏については、これまでもたまにネタにしてきたが、きょうの朝日新聞に出ている「壊れゆく日本という国」を読むと、いよいよ彼も壊れたようだ。彼は「国民国家としての日本が解体過程に入った」というのだが、その国民国家を壊しているのは「グローバル企業」だといい、トヨタを槍玉に上げる。

トヨタ自動車は先般、国内生産300万台というこれまで死守してきたラインを放棄せざるを得ないと報じられた。国内の雇用を確保し、地元経済を潤し、国庫に法人税を納めるということを優先していると、コスト面で国際競争に勝てないからであろう。

わが国の大企業は軒並み「グローバル企業化」したか、しつつある。いずれすべての企業がグローバル化するだろう。繰り返し言うが、株式会社のロジックとしてその選択は合理的である。だが、企業のグローバル化を国民国家の政府が国民を犠牲にしてまで支援するというのは筋目が違うだろう。

この「政府が国民を犠牲にして支援する」というのは、彼によれば大飯原発の再稼働のことらしいが、トヨタに電力を供給しているのは中部電力だから大飯とは無関係だ。まぁそれはいいとしよう。彼は原発の停止で何が犠牲になったかを知らないのだろうか?

経産省の試算によれば、原発停止による燃料費増は、2013年度には3.8兆円にのぼる見通しだ。これは昨年度の3.1兆円より原油高や円安でコストが上がったためで、2011年度の2.4兆円と合計して、原発停止によって3年間で9.3兆円の国富が失われる。これを「恫喝だ」という内田氏は、原発の停止によって得たものが9兆円以上の価値があることを証明してみろ。

彼にはそんなことをする気もないだろう。彼のように印税で食っていける特権階級にとっては、カネは天から降ってくるので、原発を稼働してエネルギーコストを節約する必要なんてないからだ。彼はグローバル企業は「原発を再稼働させて製造コストを外部化」し、国民に負担させているのだというが、彼の望みどおりトヨタが日本からなくなったらどうなるだろうか。

トヨタは国内で約7万人の従業員を雇用し、昨年3月期には2600億円の法人税を払っている。従業員も所得税などを払っているので、豊田市の財政の80%は何らかの意味でトヨタ関連だといわれている。トヨタがなくなると豊田市の財政は破綻し、42万人の市民の多くが職を失うだろう。

内田氏の思っているようにカネは天から降ってくるのではなく、(グローバルだろうとなかろうと)企業で働いている人々が稼いでいるのだ。こんな中学生の作文にも劣るような話を、チェックもせずに載せる朝日新聞も、壊れつつあるのではないか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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