「どこでもテレビ」はテレビ離れを阻止できるか --- 岡本 裕明

2013年05月11日 10:59

ゴールデンウィークでニュースが少ない週末の日経トップ記事は「スマホでどこでも視聴 年内にも 専用テレビで転送」。仕組みはご家庭のテレビを専用テレビと称する基地にしてそこからスマホやパソコンなどにその内容を通信できる仕組みであり、海外でも見られるとのことであります。


ここまでのストーリーを聞いてどこかで聞いたことがあるな、と思った方はなかなか鋭いと思います。そう、5、6年前にソニーが発売したロケーションフリーテレビそのものなのです。実は私は「ロケフリ」のセカンドバージョンを10数万円出して飛びつくように買い、海外でテレビが見られるとたいそう興奮しました。ところが購入後、失望に次ぐ失望で半年ぐらいのうちにお払い箱となりました。理由は三つ。

一つ目は接続が異様に面倒くさいこと。日本側の基地となるテレビのIPアドレスを固定する作業は一般人には到底理解不可能でした。しかもそのために別の部品も購入しなくてはいけませんでした。ソニーのお客様サポートセンターとかかりっきりでやり取りして接続できた時には思わず「ふぅ」というため息が出ました。

二つ目は当時は通信速度が遅すぎて画面と音声がほとんどばらばら。音声は普通に流れるのですが、画面は途切れがち。野球を見ているとまるで星飛馬が花形満に投球しているようで「早く投げろ」と思わず画面に叫びたくなる遅さでした。

三つ目に時差の関係で少なくともバンクーバーではゴールデンタイムは日本のテレビはもっともつまらない時間といわれる午後2時から午後4時ぐらいにあたり、見たい番組は皆無でした。

とはいえ、これは海外での昔の話で、あれから通信速度も速くなりました。では、今回、満を持して再登場する「ロケフリ」には期待できるのでしょうか?

まず、テレビがどこでも見られるというのは日本ではワンセグがありますので別に珍しい機能ではありません。ロケフリやワンセグではなくても家の風呂に入りながらテレビが見られるような商品も昔から出ていますから今回発表になった内容に画期的な事実はなんらありません。

とすれば今回NHK,民放5社の意図は何かといえばテレビの視聴率を上げることなのだろうと察しています。ご承知のとおり、最近はインターネット経由でほとんどの情報が取れますし、海外では普通にネット経由でドラマを見ている人が主流かと思います。テレビ離れは着実に進んでおり、私の周りにテレビをもっていないという人はそこそこいます。また、海外で見られる日本語テレビ(北米ならジャパンTV)に入っている人も私の周りには案外少ないのであります。そういう私も半年以上前に100チャンネル以上見ることが出来たケーブルテレビをベーシックに切り替え、日本語テレビも契約解除してしまいました。なぜなら、テレビを見ることはほとんど皆無であるからです。

見たいドラマは香港や台湾経由のDVDを買ってきてしまうし、テレビのニュースはネット経由で画像こそ悪いですが、生で見られるのです。

ただ、家にあるテレビを基地にするという発想はアイディアをもう少し展開させれば面白い商品ができるような気がします。録画などで溜め込んだ内容をスマホに引き出したい時に引き出せること、自分で撮影したビデオ、好きなユーチューブを保存しておく、更には子機となるスマホと家のテレビの間で画面を通じてやり取りする、旅先の画像をスマホで取り込み、それをリアルタイムで家のテレビの映し出すなどなどアイディアはいくらでもあると思います。

ポイントはテレビは基本的に一方通行であり、役者や芸人が一般人にエンタテイメントを提供しているという発想ですが、今はその格差がせまくなり、一般人の才能を発掘し、参加型になっているということです。ユーチューブはその点において画期的役割を果たしました。

そう考えれば今回の日経トップ記事の内容は日本的発想が抜けないひねり不足が否めないものだったという気がします。アイディアのドライバーは誰で何が欲しいのか不明瞭でした。日本は利害関係が複雑すぎてそれが足かせになっているかもしれませんね。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月10日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

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