いつまで続くのか、日本の外交ベタと稚拙な対外発信 --- 岡本 裕明

アゴラ

この数日、二人の名前がメディアをにぎわしています。橋下徹大阪市長、そして飯島勲内閣官房参与であります。それぞれ、アメリカ、北朝鮮との接触において物議をかもし出しているわけですが、今日はなぜこうなってしまったのか、考えてみたいと思います。


まず、橋下市長の性犯罪防止のために風俗産業を利用すべきだという発言はあまりにもばかばかしくてコメントをする気もおきなかったのですが、一言だけ申し上げます。橋下氏は風俗は職業を自由に選べる中でその仕事を選び、法律の範囲内のことなのだからむしろそれは利用すべきという趣旨のことを発言されています。風俗に好きで働いている人が本当に多いのでしょうか? 金銭的なことなどを理由にしょうがなくて仕事をしている人も多いでしょうし、あまり胸を張れる仕事だと思っている人も少ないのではないでしょうか? 法律云々といったところで私は橋下氏の弁護士としての発想が出ているな、と感じました。

私も業務で弁護士とやり取りをしていますが、ぶつかることもしばしばです。その理由は世の中、法律がすべてではないからです。道徳や理性などもあるのです。橋下発言を受けてアメリカ国務省の報道官が批判を述べていますが、当然であります。あまりにも無防備な民間外交をしてしまったと思っています。

次に飯島参与の北朝鮮訪問。もともと完全極秘裏に行うのであれば、貫き通してもらいたかったと思います。どうも想定外でばれてしまったということのようで、安倍首相の歯切れも悪く、今になってフォローをする羽目になってしまったのは政府、外交を含め下手を打ったということかと思います。ばれる危険性があればなぜ、アメリカ、韓国と事前調整をしなかったのかということになります。日本はもともと真珠湾攻撃のように不意打ちをするというイメージがありますので再び、その印象を強めてしまったということになりかねません。

安倍首相の目的が拉致問題解決を目指し、山積する両国間問題、特に核問題や朝鮮総連本部ビルの行方などディールのカードを使いながら問題解決姿勢を見せるというパフォーマンスだとすればもはやチーム安倍はオーバーワークであるといっても過言ではないでしょう。

結果として外交に関してはバランス感覚が失われてきています。力関係が誰を重視し、誰を現状維持にするのかみえていないのです。少なくともロシアに北方領土問題で良い顔、トルコや東南アジア諸国にも経済関係を緊密にする過程の中で良い顔、北朝鮮問題では中国から思いのほかのサポート、一方アメリカからは橋下、飯島両名の動きに対して懸念を抱かせています。安倍外交は本来であればアメリカ向きであったはずですが、八方美人的な全方向外交を推し進めることで結局、日本は自国の利益のみを考えているのではないかという疑念を抱かせてしまったようです。

そういえば猪瀬東京都知事のオリンピック発言もニューヨークタイムズという特殊性を加味せずに日本でインタビューを受けるぐらいの軽はずみさがあの騒ぎとなったわけですが、結局、取り巻きは何をしていたのか、というのが私の疑問として残ってしまいます。つまり、秘書ではなく、極めて優秀で広範囲の知識を持つブレーンを常に持つことが日本の一定地位の方々には必要だと思います。そして、トップはブレーンの言うことを真摯に聞くことが大切ではないでしょうか? 吉田茂には白州次郎という全幅の信頼が置けるブレーンがいました。そのおかげで吉田茂は何度も救われています。

日本はいつまでたっても外交ベタといわれるのは要人が不用心な発言をするからであり、その発言が不用心だとすら感じてもらえていない橋下氏には悩ましいものを感じてしまいます。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年5月17日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。