やっと終わった「アベノミクス」の空騒ぎ

2013年06月07日 02:47

昨年11月の安倍総裁の「輪転機ぐるぐる」発言に始まり、1月のインフレ目標設定で一段高となり、4月の黒田総裁の「異次元緩和」のあと8割も上がった日経平均株価は、きょう1万3000円を割り、異次元緩和の前の水準に戻った。これはドル/円レートとほぼ見合っており、そこから上ぶれした分はバブルだったということになる。ドルも96円台になっており、株価もまだ下がるだろう。


図1


JBpressでも書いたように、この動きは当然だ。もともと安倍氏の演説が何の根拠もない偽薬であり、黒田氏の国債買い占めは債券市場を混乱させて金利を上昇させてしまったからだ。おまけに安倍氏が5日に打ち出した「成長戦略」に、まったく中身がなかったことが市場を失望させた。自民党経済再生本部の中間提言には「新陳代謝、オープンで加速」と題して、

  • 「業者行政」から「競争政策」への転換

  • 独立社外取締役び導入・積極登用
  • 株式持ち合いの解消、銀行による株式保有制限の強化

などの政策があげられていた。注目された雇用改革は消えたものの、持ち合い解消などは思い切った提言だったが、これも安倍氏の最終案からは消えた。あまりの不評に、翌日になって官房長官が「法人税の減税」を言い出す始末だ。今のように支持率の高いときに、こんな腰の引けた政策しか出せないようでは、安倍氏の指導力は疑問である。

「まだ調整局面だ。2007年の18000円台の高値までは行く」という声もあるが、次の図のようにドル建てで見ると、すでに2007年と同じ水準に達して下降局面に入っている。株式市場の6割を占める外人投資家が、ドル建てで見ると割安になった日本株を買い、それに追随して日本人が買い始めたとき、外人が売り逃げたという恰好だ。

nikkei
図2

しかも図1で日経225とTOPIXを比較すると、5月以降の上昇局面で3%ぐらい日経が高いという奇妙な特徴がみられる。日経平均は特定の銘柄に片寄っているので、たとえばファーストリテイリングに大量に買いを入れれば上げることができる。ほとんどの人はTOPIXなんて見ないので、5月以降の日経の奇妙な高値は何者かによって演出され、素人に提灯買いさせて売り抜けた疑いがある。

日経平均のPERは14倍程度に下がったので、海外と比べても割高感はなく、これ以上大きく下げることもないだろう。かつての日経平均8000円台というのは低すぎたので、それを妥当な水準まで引き上げ、投資マインドを改善した安倍氏の功績はたたえられてよい。しかし彼の偽薬だけでよかったのだ。インフレ目標も異次元緩和(実際には引き締め)も有害無益だった。

いずれにせよ、国民生活を改善するのは株価ではなく、所得の増加である。相場は「期待」で上がり、「失望」で下がる。それを中央銀行が自由自在に動かせると思うのは傲慢である。社会科学では実験ができないというが、無知な首相と自信過剰の日銀総裁のおかげで、貴重な社会実験ができた。もうここらで撤退してはどうだろうか。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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