人ごとでは済まない韓国スマホ中毒 / SNSを考える その2 --- 岡本 裕明

アゴラ

時事通信によると韓国で「禁断症状」がでるなどスマホ中毒が大きな問題になり政府が対策に乗り出したと報道されています。6才から19才のスマホ所有率は2011年に21%だったものが12年には65%に達するなど爆発的に普及が進んでいます。それはスマホがないとそれこそ仲間はずれにされる状況にあるともいえそうです。


私の知り合いの韓国人もトイレに行く時までスマホを持ち歩き続け、そのテキストメッセージのやり取りはほぼ会話をしているのと同じ状態の時もあります。問題はそれを他人と居る時も平気でやりつづけることで結果として相手の人は著しく不愉快な思いをしていても本人は気がつかないか自制ができない状況になっているのです。これは明らかに病的状況なのですが、なぜ、ここまでテキストをやり続けるのか、と考えればその先にはテキストにはまっている相手もいるということをまず指摘しておきましょう。

テキストですから字数制限もあり、その内容は事実関係の表面的表現にとどまります。一方、返信に対するスピード感も当然意味あるものでしょう。結果として想定できるのは内容よりも繋がっていたいという「寂しさ」がその前提にあるように思えます。

韓国は言わずと知れた教育国で苦労して勉学しても一流の財閥系企業に入れる人はその中でもごく一握り。ソウル大学でも正社員の就職率は5割程度。その戦いに敗れたほとんどの学生は非正規雇用などで極めて低い賃金で辛酸をなめなくてはいけないのです。その社会において自分の気持ちを紛らわせてくれるのはSNSや薄い付き合いの友人でネットで繋がっていることに安心感を得るのだろうと思います。

ネットは明らかに人と人のつながり方を変えたと思います。以前はリアルの世界、それができなければ手紙や電話、もう少し薄い関係でも年賀状という形でお互いの状況、所在をお知らせすることで双方が「あぁ、彼は元気にしているようだ」という安心を確認しました。

それまでは友達の範囲は学生時代の友人、会社、近所、趣味の教室など限定されていたのに会ったことがなくてもある部分での共感があればお友達になることができるのです。そして、双方はお互いの1%とか2%のごく一部の価値観の共有を通じて安心感を持ち続けるという奇妙な状態が続くのです。

これは将来ある弊害を起こす可能性があります。その一つは恋愛や結婚ができなくなるかもしれないということです。ネット上のある部分で強い同朋感を持ち合わせるとリアルの恋愛対象者はその強さに負けてしまいます。また、人間の魅力は総合的に判断しなくてはいけないのにごく一部の不備に我慢ができず、結局うまくいかないという奇妙な事態が生じるのではないでしょうか?

北アフリカのSNSによる独裁政権打破が成功した理由は何だったでしょうか? 「政権打破」というたった一点だけの共通項が若者を中心とした国民を動かしたのです。その結果がどうだったか、といえば、倒した後のプランがなく、そこからが悲惨な状況になってしまったのです。

スマホはある意味、使用者にとって最高の友達となりました。スマホを通じてやり取りする相手こそがすべて、という価値観を生んだのが韓国の実体でしょう。もちろん日本もそういう方向に走る可能性は高いと思います。それを防ぐにはリアルの世界に積極的に入り込むことが重要でしょう。日本ではシェアハウスが普及してきていますが、私はこれぞSNSのリアル版であると思います。またそこには良いところばかりではなく「我慢」しなくてはいけないことも日常的に起こりえます。それを乗り越えることが人間らしいメンタルを作り上げるのだろうと思います。

今日はこのぐらいにしておきましょう。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年6月21日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。
オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。