いま100億円あったらどう使う? --- 中村 伊知哉

2013年07月12日 08:00

かつて麻生政権のころ、「アニメの殿堂」予算が批判を受けました。

正式名称:国立メディア芸術総合センター。

んで、民主党政権になって、ポシャりました。

ぼくは、ポップカルチャーに100億円を投ずること自体は悪くないと思うんです。当時の道路予算の1/1000。1日工事休めばひり出せるカネですわ。


で、一休みして、自民党政権となり、改めてクールジャパン政策とかポップカルチャー政策に光が当たっています。成長戦略とかで。

歓迎する声もある一方、批判もあります。

それは、おカネを使うかどうか以前に、その政策の具体像がまだ明確じゃないからですね。ポップカルチャー政策と言っても、殿堂作り、制作現場の労働環境改善、業界への資金提供、特別減税、著作権制度改正、海賊版対策、教育の拡充、イベント支援、技術開発、TPP交渉……まあいろいろあるわけです。

そんな中、やはりハコ作り、拠点作りをという意見があるんですが、ぼくはあえて「ハコからヒトへ」を主張します。

おカネは使えばいいと思います。

日本の文化予算は欧州や韓国に比べ、大きく見劣りします。10倍増したっておかしくない。

問題は、使い方。

「アニメの殿堂」はハコでした。予算案117億円は用地取得費用と建設費でした。メディア芸術ではなく土建に回るカネ。必要なのは、そこじゃない。100億円でセンターを一つ建てても、せいぜい地方都市の美術館程度の賑わいだったでしょう(地方都市の良質の美術館は、そこそこ家族連れで賑わっています)。

そうではなく、4年前、100億円を1000万円×1000件に分けて、クリエイターやプロモーターやサイト主催者やワークショップ提供者に配っていたら、どんなに賑やかになっていたことでしょう。

ハコや拠点はいっぱいあります。

各地の美術館、資料館、大学、廃校の小中学校、ネット上のアーカイブ。イベントもいっぱいあります。コミケ、コスプレサミット、ニコニコ超会議、沖縄国際映画祭、JAPAN EXPO。みんなの力を活かせばいいんです。

集中より分散。

1988年、竹下内閣のころ、「ふるさと創生事業」というのがありました。

全国の市町村に1億円ずつバラまいて、好きなことをさせました。当時3000以上の自治体がありましたから、3千億円。

宝くじでスッた自治体もあれば、温泉を掘り当てられなかったところもあれば、金塊を買って観光資源にしたところもあれば、高金利時代、全額預金して着実にもうけた自治体もあります。大分はパソコン通信ネットワークを建設するという先見の明を示しました。

賛否ある大盤振る舞いでしたが、全国で知恵がしぼられ、みんなが政策に参加して、賑やかなことになりました。どうしていいかわからんときは、みんなの力を頼りに、エイヤっとおカネつけてもいいんじゃないですかね。

さて、そこで、もしも、改めて100億円がポップカルチャー政策に用意されたら、どう使います? 100億円でハコ建てるか、10億円を10個に分けるか、100万円を1万件に分けるか。それとも、やはりそんなカネは不適当で、地方道路の拡張工事に回しますかね。


編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2013年7月12日の記事を転載させていただきました。
オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。

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